8 「あぁ、もう夏祭りの時期なのね」 主婦業には休みも何も関係ない、とよくお母さんはぼやいている。買い物に出かけたりするとはいえ、ほとんど毎日家にいると、季節も関係なくなるらしい。 「うん」 「でも、珍しいわね。遥が夏祭りに浴衣着ていこうとするなんて」 言われて気付く。 夏祭りといえば浴衣のイメージだが、自分でそれを着ることはここ最近考えていなかった。大抵Tシャツとジーパンで済ませる。 だが、先輩に祭りに誘われて、そういや浴衣あったかな、と自然に考えていた自分に気付いた。 「なんでだろ?」 自分でも不思議だったので口に出したら、変な顔をされた。 「変な子ね。でもまぁ、とりあえず出しておくわね」 「お願いします」 話を終えた母が部屋を出ていくと、私はまたベッドに寝転がった。仰向けのまま、深く息をする。 寝返りを打って視界に入ったカレンダー。夏祭りまであと三日。 ちょっとだけ、胸が騒いだ。 [*back][next#] |