12
公園に着くと、遥はやっぱり遥らしく、やたらと食べ物の出店を見ていた。
人込みの中で足を取られないように気を付けている僕なんかそっちのけで、焼そばだのチョコバナナだのを見つけてはしゃぐ。
そんな様子を見ていると、僕まで楽しくなってくるから不思議だ。
「先輩先輩! あれあれ、あれやりたい!」
「ちょっ、引っ張んなって」
慣れてなくて、なんて言ってたのはどこの誰だったか、僕のTシャツの裾を引っ張ってぐいぐいと先に進む。
遥に連れて来られたのは、射的の出店だった。一回三発百円の札がかけられている。テントの奥に並べられた子ども心をくすぐるようなおもちゃの数々。それを前に目を輝かせる遥は、まさに子どもそのものだった。
バチン、と音がして、棚に並んでいた人形が倒された。店の人が倒された景品をカウンターにいた男性に渡すと、男性は足元にいた幼稚園くらいの男の子にそれを渡した。男の子は興奮した様子で人形を抱き締める。
「…………」
そんな様子をじっと見つめる、僕の隣の女の子。
──あんな笑顔、見せてくれるんだろうか。
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