6 「お前が動揺すんの珍しいな」 「誰のせいだよ……。でも、俺じゃないから安心しろ」 「何を根拠に」 「俺をスるのは簡単じゃないよって話」 「あー……」 本人は軽く答えているが、確かに木瀬が簡単に拉致られるとは思わない。 ただ、やっぱ気になるな……。 一応気には止めておこう、相槌を打ちながらそう思った。 「つーか、拉致られるなら完全に白河の役割だろ」 「なんだそれ?」 「お前の彼女的ポジションじゃん、あいつ」 「どこがだよ!」 男になんて解釈してんだ、恐ろしい。 「それか、単に拉致るって意味じゃなきゃ――」 木瀬がさらにマジな声で切り出す。 「白河を、自分の女にする気なのかもしれない」 「……いや、あいつ男だし」 「そこはもうこの際無視しろ」 無視していい項目か、性別って。 けど、そこに拘っていたらいつまでも話が進まない。 「白河にとっては性別は関係ない。澤村がそうじゃないとは言い切れないだろ」 「まぁ……」 薄々感じていたし、今更だけど……。 やっぱ、そういう奴なんだよな、白河って。 「柳の出番じゃん」 「な、何だよ……」 この異様に面白そうな顔、嫌な予感がする。 「挑発されたからには、頑張って彼女守らないとね〜」 「は、はぁ? なんで俺が!」 「柳は白河が心配じゃないのかよ?」 「それは……」 あいつも男だし、と言う言葉は飲み込んだ。 それこそ会話の無限ループが始まる。 ←→ |