3 陽光でも俺の名前は知られていた。 場所が変わっただけで、俺の扱いは同じだった。 興味本位で喧嘩を仕掛けてくる奴はいたけど、俺を満足させてくれるような奴はいなかった。 あいつに、会うまでは――。 「あんたが柳ー?」 授業フケって川原で昼食をとっていた時だ。 緊張感の欠片もない、ゆるい声が俺を呼んだ。 「柳龍之介って、あんただろ?」 「……なんか用かよ」 現れたオレンジ頭の男は、やけに親しげに話してきて、その慣れない扱いに最初は言葉が出なかった。 「いやーすっごい噂だから、どんな奴なんかなって」 「こんな奴だよ」 適当に返してたら、それが男は興味をそそられたらしい。 オレンジ頭の男は、俺の隣に寝転んで空を見上げた。 「授業サボって寝る河原って、格別〜」 「お前もサボりかよ……」 「午前中は居たんだけどさぁ、退屈で」 退屈。 こいつも俺と同じなのかと思った。 「……てか、本気で気づいてない?」 「なにが」 「俺ら、同じクラス」 「はぁ?」 俺と自分を交互に指さしながら、男は笑った。 「気づくかなと思ってカマかけたのに、本気で他人を見る目だったからさー」 オレンジ頭を掻き上げながら、その男は起き上がり、それまでの緩い笑みを浮かべたまま、聞きなれたはずの言葉を放った。 「喧嘩、してみない?」 オレンジ頭の死神がいる――。 その噂を聞いたのは、数日後のとこだった。 ◇ ◇ ◇ 俺の足はいつの間にか、あの河原に向かっていた。 ←→ |