1 風が心地いい。屋上も悪くねぇな。 休日に学園に来るなんざ、俺らしくないのは重々承知だ。 だが、同室の奴が恋人を連れ込みたいとか何とかで、追い出されたわけだ。 まぁ、相手は男だが。 「はー……」 部屋を出る前、同室の奴が言った一言が引っ掛かってならない。 “柳も、あいつ連れ込むときは言えよ” 含み笑いに無性に腹立った。目付きがヤバくなった事に焦ったのか、アイツは言った。 “お前らデキてんじゃねーの?” 「何で木瀬なんだ……」 てっきり白河の名前が出てくると思っていた俺は、意表をつかれ何も言わずに一発殴った。 「あの噂……白河の事、そんな言うほど広まってねぇのか?」 それならそれで少しは気が楽だ。 街にでも繰り出そうか悩んだが、ここ最近休日になると木瀬はいなくなるし。 今日は……誘う気になれなかった。 「…………」 ただ、このままここにいるわけがない。 どう時間を潰すか考えたら、白河の顔が浮かんだ。 ……白河、今部屋にいるか? 考えたらケー番すら知らねぇし、部屋に行ってみっか。 体を起こしたら、さっきより幾分か冷えた風が口笛を吹いた。 ◆ ◆ ◆ 校舎の階段を下りながらあくびを咬み殺す。 そう言えば、白河の部屋に行くのはあの日以来だな……。 あの時、意味深なことを言っていた野郎――澤村も、あれ以来見ていない。 あの日から、白河は必要以上に会いに来ることがなくなった。 話を聞いたら生徒会が忙しいとか何とか言ってたけど。 (嘘だろうな……) いくら俺でも、それくらいわかる。 ←→ |