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「いや頑張るもんでもないんだが」
「大丈夫だって! 俺もいるし!」
 らぶがわしゃわしゃ撫でると、すずは涙目のままありがとうと言った。やっぱり仲が良いんだなこいつら。
「大丈夫か、入り方は解るか」
「うん! 風呂はよく一緒に入ってたから」
「だ、大丈夫です……たぶん」
「……頑張れ」
 前言撤回。やっぱ、すずにとって風呂は頑張るものらしい。俺は小さくエールを送った。

   ◆ ◆ ◆

「兄ちゃん、らぶとすずの寝る場所どうしよう」
 畳に布団を二枚ひきながら、弟が困ったように言った。動物のままなら問題なかったが、人間並みのでかさとなると話は別である。
「うーん……」
「布団に入れてあげようよ。予備のがもう一枚あるし、四人なら何とか入れると思うから――」
「ううっ、ご主人様、ありがとなっ」
 いつの間に風呂から上がったのか、俺のジャージを着たらぶと弟の体操着を着たすずが立っていた。
「あの、僕たちなら廊下とか庭でも大丈夫です。もとは犬と猫ですし……」
「ダメだよ! そんなところで寝たら体壊しちゃう!」
 遠慮する二匹をずるずると引っ張り、一緒に布団にダイブする。さすがにびっくりしてたけど、ふかふかの布団には抗えないのかすぐに気持ち良さそうにした。
「兄ちゃんも、ほら!」
「お、おう……」
 そう言えばガキの頃から動物のこととなると人が変わるんだ、この弟は。諦めて俺も一緒に布団に飛び込んだら、すずの耳がぴくんと震えて、はにかむように笑った。
「……おやすみ」
「おやすみなさい、春馬様――」

 それから俺たちの、奇妙な共同生活が始まったのだった。



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