4 「いや頑張るもんでもないんだが」 「大丈夫だって! 俺もいるし!」 らぶがわしゃわしゃ撫でると、すずは涙目のままありがとうと言った。やっぱり仲が良いんだなこいつら。 「大丈夫か、入り方は解るか」 「うん! 風呂はよく一緒に入ってたから」 「だ、大丈夫です……たぶん」 「……頑張れ」 前言撤回。やっぱ、すずにとって風呂は頑張るものらしい。俺は小さくエールを送った。 ◆ ◆ ◆ 「兄ちゃん、らぶとすずの寝る場所どうしよう」 畳に布団を二枚ひきながら、弟が困ったように言った。動物のままなら問題なかったが、人間並みのでかさとなると話は別である。 「うーん……」 「布団に入れてあげようよ。予備のがもう一枚あるし、四人なら何とか入れると思うから――」 「ううっ、ご主人様、ありがとなっ」 いつの間に風呂から上がったのか、俺のジャージを着たらぶと弟の体操着を着たすずが立っていた。 「あの、僕たちなら廊下とか庭でも大丈夫です。もとは犬と猫ですし……」 「ダメだよ! そんなところで寝たら体壊しちゃう!」 遠慮する二匹をずるずると引っ張り、一緒に布団にダイブする。さすがにびっくりしてたけど、ふかふかの布団には抗えないのかすぐに気持ち良さそうにした。 「兄ちゃんも、ほら!」 「お、おう……」 そう言えばガキの頃から動物のこととなると人が変わるんだ、この弟は。諦めて俺も一緒に布団に飛び込んだら、すずの耳がぴくんと震えて、はにかむように笑った。 「……おやすみ」 「おやすみなさい、春馬様――」 それから俺たちの、奇妙な共同生活が始まったのだった。 next ← |