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「……。すず」
何となく名前を呼ぶみたいに呼び掛けたら、にゃあ、と返事をした。気に入ったのか、それなら良かった。
「さて、二匹を綺麗にすっか」
すっかり仲良くなったらぶと弟にそう言ったら、弟が返事をする前にぼんっ! と犬が爆発した。
「らぶ!?」
弟がびっくりしてそれを抱き上げる。
「……え」
その手が固まった。もちろん俺も。犬だった筈のらぶが、人間の男になっていた。
「ご主人様っ!」
「えっ、えぇー!?」
満面の笑みで混乱する弟に抱き付いた中学生くらいの少年には、しっかり犬と同じ色の耳と尻尾が付いていて、その尻尾はご丁寧に犬と同じようにぶんぶんと揺れている。幻じゃない。
「な、何がどうなって――」
すると俺の背後でもさっきと同じ爆発音がした。まさか、まさか、嫌な予感に振り向けずにいると、後ろから誰かがぎゅっと小さな手で抱き締めてきた。白くて柔らかい。
「ご、ご主人様……」
「すず、なのか?」
背後で小さな子供がこくんと頷いた。どうやら俺達は、とんでもない“拾い物”をしてしまったらしい……。
◆ ◆ ◆
「説明、できるか?」
裸だった二匹に俺達の服を着せて、取りあえず話を聞こうとする。おどおどするすずが何かを言う前に、らぶが笑顔で言った。
「ご主人様たちに、お礼がしたい!」
「そ、そうなんですっ、何か僕たちに出来ることはないですか?」
そうきたか……。
「お、お礼って言っても、まだ何にもしてないし」
弟が戸惑うように言う。確かに、まだ家に拉致って服を着せただけだ。
「名前、くれた」
「ん?」
「ご主人様が俺たちに名前をくれた」
らぶがあまりにも愛おしそうに笑うから、幸せが伝染するみたいだ。弟がそれにみとれてたら、すずがおずおずと口を開いた。
「あの……ご主人様たちのお名前を聞いてもいいですか……?」
「え、あ、聞いてなかったっ!」
らぶがハッとして俺たちを交互に見る。取りあえず自己紹介をしないといけないらしい。
「俺は春馬、解んねぇかもだけど高校二年」
「夏希だよ。俺は中学一年……わっ!」
「なつきー! ありがとな!」
名前が解るやいなや飛び付くらぶ。よっぽど嬉しいらしい。
「あっ、あのっ」
「ん?」
すずが俺の前に正座する。何かを決心したみたいに俺を見上げて、服に手を伸ばした。
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