2 「……。すず」 何となく名前を呼ぶみたいに呼び掛けたら、にゃあ、と返事をした。気に入ったのか、それなら良かった。 「さて、二匹を綺麗にすっか」 すっかり仲良くなったらぶと弟にそう言ったら、弟が返事をする前にぼんっ! と犬が爆発した。 「らぶ!?」 弟がびっくりしてそれを抱き上げる。 「……え」 その手が固まった。もちろん俺も。犬だった筈のらぶが、人間の男になっていた。 「ご主人様っ!」 「えっ、えぇー!?」 満面の笑みで混乱する弟に抱き付いた中学生くらいの少年には、しっかり犬と同じ色の耳と尻尾が付いていて、その尻尾はご丁寧に犬と同じようにぶんぶんと揺れている。幻じゃない。 「な、何がどうなって――」 すると俺の背後でもさっきと同じ爆発音がした。まさか、まさか、嫌な予感に振り向けずにいると、後ろから誰かがぎゅっと小さな手で抱き締めてきた。白くて柔らかい。 「ご、ご主人様……」 「すず、なのか?」 背後で小さな子供がこくんと頷いた。どうやら俺達は、とんでもない“拾い物”をしてしまったらしい……。 ◆ ◆ ◆ 「説明、できるか?」 裸だった二匹に俺達の服を着せて、取りあえず話を聞こうとする。おどおどするすずが何かを言う前に、らぶが笑顔で言った。 「ご主人様たちに、お礼がしたい!」 「そ、そうなんですっ、何か僕たちに出来ることはないですか?」 そうきたか……。 「お、お礼って言っても、まだ何にもしてないし」 弟が戸惑うように言う。確かに、まだ家に拉致って服を着せただけだ。 「名前、くれた」 「ん?」 「ご主人様が俺たちに名前をくれた」 らぶがあまりにも愛おしそうに笑うから、幸せが伝染するみたいだ。弟がそれにみとれてたら、すずがおずおずと口を開いた。 「あの……ご主人様たちのお名前を聞いてもいいですか……?」 「え、あ、聞いてなかったっ!」 らぶがハッとして俺たちを交互に見る。取りあえず自己紹介をしないといけないらしい。 「俺は春馬、解んねぇかもだけど高校二年」 「夏希だよ。俺は中学一年……わっ!」 「なつきー! ありがとな!」 名前が解るやいなや飛び付くらぶ。よっぽど嬉しいらしい。 「あっ、あのっ」 「ん?」 すずが俺の前に正座する。何かを決心したみたいに俺を見上げて、服に手を伸ばした。 ←→ |