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3
「ここに住んでた猫だよ!」
「ああ、それならば科学班の管轄ですので、私たちには解りかねます。それよりも――ご自分の身を案じられたほうがよろしいかと」
「っ……」
 くそ、ここまでか。
 軽い衝撃とともに意識を失う直前、らぶとすずの姿が浮かんだ。

   ◆ ◆ ◆

「どっか、隠れないと……っ」
 走り回って、微かに開いている部屋を見つけた。
 そこに飛び込もうとしたら、伸びてきた誰かの手に引っ張られ、手前の部屋に引きずり込まれた。
「いったたた」
「大丈夫?」
 女の人の声だった。
 見上げると、白衣を着た女性が心配そうに見下ろしてきた。
「あ、あなたは……」
 さっきの人たちみたいな敵意が感じられない。女の人は微笑んで、メガネを外した。
「落ち着くまでここに居るといいわ」
 見渡すと、部屋の中心にデスクとパソコンが一台、周りはぎっしりと本棚で埋め尽くされていた。
「ここは……?」
「私の仕事部屋なの。お客さんが来たのは久しぶりね」
 手招きされて机に近づくと、その下に隠れるよう合図された。
 椅子を引いてその中に入る。
 同時に、ドアがノックされた。
「はい」
 女の人が返事をすると、さっき聞いた男の声がした。あの執事だ。
「侵入者だ、マリナ」
「解ったわ、鍵をかけておく。特徴は」
「男のガキだ、片方はあの部屋に閉じ込めてある」
「あの部屋? ……子供相手にそこまですることないと思うけど?」
「やつらは猫を連れていた」
「……無月様の敵ということね」
「そうだ。何をするか解らない、気をつけろ」
「オーケイ」
 男は去っていった。女の人はそれを確かめてから、部屋の鍵を閉めた。
 心臓がうるさい。どうしよう、今から連れ出されて、捕まったら。
 女の人――マリナさんの足音が近づいてくる。ぎゅっと目をつぶった。
「……行ったわよ、もう大丈夫」
 その声は、最初と変わらず穏やかなものだった。

   ◆ ◆ ◆

 ――るま、はるま



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