2 とりあえず確かめてきますと言い残して、すずが素早くドアに近づく。 鍵はかかっておらず、すずがそっと中を覗いた。 しばらくそうして、俺たちを手招く。 「行こう、兄ちゃん」 「ああ――」 待ってろ、らぶ。 俺たちが必ず連れ戻してやるからな! ◆ ◆ ◆ 北条の家は、外で見るよりも立派な屋敷だった。 「殺意沸く」 「俺も」 「ふ、ふたりとも、怖いです」 兄弟の形相に怯えながらも、すずは細心の注意で廊下を進んでいった。 屋敷の中には微かにクラシックが流れている。けれど住人や使用人の気配はまったくしなかった。 (すずの言うとおり、本当に昼飯作ってるだけなのか……?) そんな不安もありながら、それでも俺たちは先へと進んだ。 「春馬様がらぶを見たのは、格子のある窓の部屋でしたよね」 「ああ、そうだ」 思い出してもゾッとする。あんな場所に、らぶを置いておけるわけがない。 「ひとつ、心当たりがあります。ただ、その部屋は北条無月様の部屋のすぐそばです。注意しなければ」 あの日、誰かに腕を引かれていたらぶを思い出す。あれはやっぱり、北条なのか――。 「二人とも、待って」 小さなその声に足が止まる。 見るとその先は階段だった。 「二階は食堂があります、一気に三階まであがります」 俺も夏希も短く頷いて、すずが動くのを合図に一気に駆け上がった。 ここを上がればらぶがいる――その一心で。 しかしそれは失敗に終わった。 「きゃああ! 誰!?」 メイドの一人が俺たちに気づいて声を上げた。 それからの展開は早かった。すずは白衣を着た男に連れて行かれて、俺と夏希は、執事服の男たちが抑えにかかってきた。 「夏希!!」 視界に捉えた、夏希の背後にいた男を突き飛ばす。同時に夏希の体が使用人たちからそれた。 「行け!」 「――わかった!」 乱闘が後ろから聞こえたが、それを振り切って夏希は走った。小さな体が有利になってか、どうにか逃げ切ることができた。 「……お前ら、すずをどこにやった!」 「はて」 首をひねる執事服の男に、もう一度怒鳴る。 ←→ |