[携帯モード] [URL送信]
2
 家に帰ってきたご主人様達に事情を聞き、僕は自分から昔の話を切り出した。
「無月って、俺と同じ名前……」
「けど!全然違いますっ!」
 慌てて否定する。僕はぐっと息を飲んで、続きを話した。

 それから度々秘密で会うようになった僕達は、すぐに仲良くなった。ただ僕は殆どご主人様の側にいたし、らぶは庭に隔離されていたので、頻繁には会えなかったけれど。
「あ、あの……大丈夫?」
「へーき。なつきを怒らせる俺が悪いんだし」
 何でもないように話ながら、傷口をペロペロと舐める。
「ご、ごめんね……。僕、何もできなくて……」
「俺はいいよ。それより、お前は大丈夫か?見た限り俺みたいに殴られたりはしてないみたいだけど……」
「だ、大丈夫っ!」
 ギクリとした。毎日のように僕がされていることを、彼には知られたくなかった。
「何かあれば俺に言えよ!」
「う、うん」
 でも僕は、そんなことを話すより、ただ彼と話せる方が楽しいと思えた。

 ある嵐の夜、いつものように僕はご主人様に奉仕を命じられた。
「ん…、みぃ…っ」
「ハッ、すっかり淫乱な猫になったなぁ?それでいい」
「は、い…、ご主人様…」
 ご主人様の熱を蕾で受け入れながら、どうしたら彼が満足するかだけを考えて動く。彼は、僕が大袈裟なくらい感じてる方が好き。僕の方から求める方が好き。やっと覚えた事だった。
「あっ、にゃっ…ご主人様ぁ…っ」
「僕は、賢いやつは好きだよ」
 頭がボーッとして、最後は何も考えられなくなる。こんな僕を……あの子には見られたくない……。
「――よくやった。今日は少し変わったことをしようか」
「は……はい……」
 何をするかなんて解らなかったけど、いつも逆らわないことは統一していた。けれどそれもその日までだった――。
「入ってこい」
「え……」
 ご主人様が誰かを呼んだ?こんなこと今までなかったのに……。
 扉を開けた顔に僕は、また頭の中が真っ白になった。
「お前……なんで」
「え、あ……あ……」
 互いに絶句する僕達を見て、ご主人様は満足気に笑った。
「二匹でこそこそしてること、僕が知らないとでも思っていたのか?……さぁ、お前の本当の姿を見せてやれ」
「……っ」
 僕の記憶はそこで途絶えた。
 気がつくと僕は、大雨の中を誰かに腕を引かれて走っていた。



あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!