3 「逃げろ!走れ!」 「あ、でもっ」 「お前が泣くくらいなら、あんなところ逃げた方がいい!」 彼なら、僕を解放してくれる。そう思うと、外の世界なんて知らないのに、不思議と安心できた。 どこまで走っただろう。体力のない僕が走れなくなると、彼は河原で立ち止まった。 橋の下に行くと箱があった。“拾ってください”と書かれたそれには毛布が敷いてあって、彼は僕を中に入れてくれた。 「君は……?」 「俺は寒さには強いから大丈夫!」 「だ、ダメだよっ……一緒に入ろうよ」 「……。うん、ありがとな」 濡れたお互いの体を暖めるように、僕達は動物の姿に戻って眠りについた。 「僕は……彼が大好きです。だからいなくなるなんて、イヤですっ」 話ながら涙がこぼれた。僕ばかり守られていて、彼だけが連れていかれるなんて、耐えられなかった。 「すず……」 春馬様が震える僕を抱き締めてくれた。優しさにまた涙が止まらなくなった。泣いてる場合じゃないのに……。 「大丈夫だよ、すず」 続いたのは夏希様のハッキリとした声。見上げると、夏希様は真っ直ぐとした目で、断言した。 「らぶは絶対、俺が連れ戻すから」 らぶ、君が連れ出してくれたお陰で、僕はこんなに優しくて頼りになるご主人様に出会えたんだよ――。 next ← |