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 優しくしてやれよ、ガラにもなく藤原がまともなことを言うから、調子が狂う。アイツはアイツで、マジに動物が好きなのかもしれない。
「それ以上傷付けでもしたら俺が美味しく拐っちまうからな!」
「美味しくは要らねーだろ変態!」
 ……前言撤回。やっぱコイツにだけは警戒しとけって伝えよう。

   ◆ ◆ ◆

「な、つき」
「らぶ……? どうしたの、眠れないの?」
 その夜、らぶが窓際に座って月を眺めていた。気付いた弟が声をかけたら、らぶが何かを言いかけて、やめた。
「やっぱ、なんでもない。おやすみ!」
「……?」
 弟は気付かなかったみたいだが、俺は布団に潜ったらぶが傷口を触って淋しそうに泣いているのを、見た。
「……らぶ」
「あ、はるま……?」
「前のご主人様が忘れられない、か?」
「……」
 直ぐに答えず、考え込んでしまった。らぶはぶんぶんと首をふって、笑顔を作った。
「ううん、大丈夫だ。ありがとな」
 犬は、特に主人への忠誠心が強い動物だ。もしかしたらまだ、前のご主人様が忘れられないんじゃないか……そう、確信に近いものがあった。けど。
「な、なに、はるま?」
 薄い茶色の髪をらぶがいつもしてるみたいにわしゃわしゃ撫でたら、びっくりしたみたいに目を丸くした。
「今は、夏希と俺がお前のご主人様だ。寂しいなら甘えたら良い」
「……くぅん」
 小さく、小さく、返事をしたのか泣いたのか解らない声で、らぶが頷いた。俺はこの時改めて、この二匹を守りたいと強く思ったんだ。



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あきゅろす。
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