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「安心はすんな、常に警戒しておけ」
「余計なこと言うな春馬テメー!」
取っ組み合い寸前で、らぶが尻尾を振って藤原に抱き付いた。
「おっと」
「よろしくな! 俺、らぶだ!」
なついたのか。らぶは人見知りしないからな。最初のもただびっくりしただけみたいだし。
「らぶ、良い名前だな」
「だろだろ! ご主人様がつけてくれた!」
「うっ……!」
らぶの純粋オーラは汚れたもの(藤原)には眩しすぎたようだ。
「春馬、こいつ貰って良い……?」
「きゃんっ! な、なに!?」
「ダメに決まってんだろ変態、どさくさに抱きついてどこ触ってんだ」
らぶを抱き寄せ体をまさぐる藤原に取りあえず蹴りを入れておく。
「はるま、俺、ちょっとびっくりした……」
「あいつのはスキンシップじゃなくてただのセクハラだからな、気を付けろ」
「セクハラってなに。……あ、でもなんか……どきどきした、変なの」
顔を赤らめて恥ずかしそうにするらぶ。珍しい表情に、俺でさえドキッとした。
「らぶ……」
「え、あ、俺なにいってんだろ! ごめんな!」
すぐにらぶはいつも通りの顔に戻ったけど、どうやら藤原は変態モードのままのようだ。
「春馬……」
「ダメだ」
「何も言ってないだろケチ!」
「泊まるのも遊ぶのも連れて帰るのも禁止だ! お前だけには渡さん!」
「ひでぇ! 鬼っ、悪魔っ!」
いつものごとく喧嘩を始めた俺たちをおろおろしながら見てたすずが、丁度帰宅してきた弟に泣きついて俺たちが我に返るまで、もう暫く掛かることになる。
◆ ◆ ◆
「兄ちゃん、もう、藤原君と喧嘩するの何回目?」
「数えてねーよそんなもん」
「夏希また料理の腕上げたな。おかわり!」
「俺も!」
「あ、僕、手伝いますっ」
その日の夕食は、また一人増えて一段と賑やかだった。藤原が帰ると言い出したのは夜中で、マジで泊まるとか言うと思ってた俺は隣にある奴の家まで送っていった。
「春馬、らぶの体の傷だけど」
「……やっぱ気づいたか」
家についたと同時に、それまでとは違う真剣な声で聞いてきて、鋭さに感心する。二人の時に聞いてきたのは助かった。あの二匹の前じゃ話せない。
「“前のご主人様”がつけたんだとよ。このこと、らぶに聞いたりすんなよ」
「しねーよ。そっか……ま、お前なら大丈夫だろ」
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