渡したいのは[ルカメイ] 町を彩る色鮮やかなイルミネーション。寒風吹きすさぶこの頃のイベントといえば、クリスマスだ。 我が家でもリンとミクがケーキを用意したり、飾り付けをしたりと、なんだか忙しなく動いている。そんな二人に命じられ、私とルカはクリスマスツリーの飾り付けをする事になったのだ。 「ミクもリンも気使いすぎ…」 別にいいのに、と呟く。クリスマスを楽しむ事をではなく、ルカとの時間をくれる事に対してだ。 「メイコさん、手が止まっていますよ。」 「え…ああ、ごめん。」 黙々と手を動かすルカからの注意に、私は素直に謝る他なかった。しかしルカと違って、私は自他共に認める不器用であり、こういった繊細な作業は向いてない。それを知ってか、ルカは私の分の飾り付けまで引き受けてくれている。 私の仕事と言えば、小さく綿をちぎってルカに渡す事くらいの物だった。 「ルカ。」 「なんでしょう?」 「私ここだとやる事ないし、あっちでカイト達の手伝いしてきていい?」 大量に届いたプレゼントの類いを運んでいたカイトとレンの手伝いをした方が、断然役立てる気がするのだ。 「だっ、ダメです!!」 ルカが焦ったように言った。 「え、そう?」 「はい。メイコさんは…メイコさんはそこに居てくださるだけでいいんです!メイコさんがいないなら私も飾り付けやめます。」 「あんたはまた子供みたいな事言って…」 ここに居るから大丈夫よ、とルカに伝えて綿をちぎる作業に戻ると、そんな私の様子を見てルカも自分の作業に戻っていった。 *** 「じゃーん!これミクちゃんと選んだケーキだよ!」 おいしそうでしょ!と付け加えられたその言葉通り、テーブルの真ん中に置かれたケーキは綺麗なデコレーションで彩られ、とても美味しそうだった。 甘い香りを漂わせた白いクリームに、真っ赤なイチゴとサンタを模した砂糖菓子が乗っている。 「このサンタが可愛くってさー」 得意げに話すリンに、ミクが相槌を打つ。どうやら二人ともが気に入っているようだ。 「でね、二人で決めたんだけど…このサンタはルカちゃんにあげるね!」 「え…どうして…」 ルカは不思議そうな顔をした。 「ルカちゃんもうすぐ誕生日だからね!特別!」 「リンとレンの方が近いじゃないの…」 「だからだよ!リンはもうすぐケーキ食べられるけど、ルカちゃんはもう少し待たなきゃいけないでしょ。」 ああなるほど、と私が呟けばルカは「それじゃあ…ありがたくいただきます…」と口を開く。 そんなルカの様子をみて、リンとミクは互いに目をあわせて笑った。 まるで悪戯が成功した子供のように無邪気な笑顔で。 均等に切り分けられていくケーキを眺めつつ、ルカの様子をそっと伺えば、何やら神妙な顔をしていた。その様子がなんだかおかしくて思わず小さく笑ってしまった。 大方、砂糖菓子のサンタを渡された意味でも真剣に考えているのだろう。ルカはそういう子だ。 「メイコさん!」 突然ルカに呼びかけられ、彼女の目を見る。 「メイコさん、これ差し上げます!」 渡されたのは砂糖菓子のサンタ。先程、リンとミクからあげると宣言された物だ。 「いいわよ別に。あんたが貰ったんだから食べなさいよ。」 「いえ…メイコさんにあげたいんです。」 ルカはそう言って、自分の皿にあった切り分けられたケーキの上から、フォークで器用にサンタを掬い取った。 それをそのまま私の皿の端に乗せる。 「私甘いものそこまで好きじゃないって知ってるくせに…」 「それでもメイコさんにあげたいんです。」 「サンタを?」 「サンタではなく…いやサンタなんですが…」 口ごもったルカを見つめれば、ルカは耳まで赤くなる。 「『特別』をあげたかったんです!」 きっと時が止まるとはこういう事なのだろう。事実、私は呼吸する事も忘れてルカの顔を見つめた。周りでは悪戯っぽく笑う姉妹達。ああ、なるほど…計画通りって訳ね、と内心思い、ゆるやかに思考を正常化させる。 もちろんいらないだなんて、言えるはずもなかった。 「ありがとう。素敵な聖夜になりそうだわ。」 「それはルカメイナイトフィーバーという意味でしょうか!?」 「あんたは空気ってものを読みなさい」 それから、いただきます、とミクの声と共にクリスマスパーティーは始まった。 Merry Christmas ! ・*・*・*・*・*・ お久しぶりな話がこれですみません。 クリスマスはルカメイ充です。 ちなみにミクリンは確信犯。 「ルカちゃんだし、このサンタめー姉にあげそうだよね」「多分ね。クリスマスだしたまにはルカちゃんにいい思いさせてあげよっか?」「さすがミクちゃん。まあ、ルカちゃんはめー姉の事になると、面白いくらい予想通りだよねー」「馬鹿だからね」「しかも変態だからね」 みたいな会話をケーキ屋でするミクリン。 メリークリスマス! [*前へ][次へ#] |