千よりも先の[ルカメイ]
※ルカ発売千日記念SS
今日で、私が初めて起動した朝から丁度千日目。
当初よりも記憶の容量が増えたメモリが、そんな時間の経過を告げている。それが私にとって、良いことなのかは分からないが、何故か特別な朝な気がして気分が良い。
今の気分は、アップテンポなメロディーに乗せた爽やかな恋の歌。
「ルカー」
「なんですか?」
心地好いメイコさんの声を、私の耳は感じ取る。そうして同時に跳ね上がる私の心拍数。
「なんか大量に手紙やらプレゼント届いてるけど」
「私宛てですよね?」
「そうそう。玄関に置いてあるけど、量が量だから早めに整理しておいてね。」
事務事項のように、すらすらとメイコさんの形の良い唇から言葉が流れる。私の今日を迎えた気持ちなど、まるで知らないかのようにいつもと変わらぬ様子。そんなメイコさんに少しだけモヤモヤとした物を感じる。
「でも何で今日はこんなに荷物が多いのかしらねー」
まるで世間話でもするかのように笑うメイコさんを見て、いよいよ私は悲しくなった。爽やかな恋の歌などと浮かれていた自分がみじめに思えて、ゆっくりと目をつむった。
それから心の底からのため息を一つ。
「メイコさん。」
自分でもビックリするくらいの低い声が出た。メイコさんもそれにただならぬ様子を感じ取ったのか、アーモンド色の瞳を大きく見開いてこちらを見つめた。
「えっ…なに?」
「今日が何の日かご存知ないのでしょうか…?」
「きょ、今日?」
ポカンとした顔を向けるメイコさんに、私は苛立ちすら覚えた。しかし、こんな恋人にもすっかり慣れてしまった自分がいて、なんだかそれすら恨めしくて笑えてくる。
「やはりご存知ないんですね…」
「だって誕生日って訳でもないじゃない?ハロウィンはまだ早いし…」
行事事に疎いメイコさんの口から、ハロウィンなどという言葉が出た事に、私は少し驚きを覚える。
いつまで経っても答えを出してくれそうにない彼女に、私はそっと打ち明けた。
「今日は…今日は、私がこの世に生まれて丁度千日目なんですよ。」
「なんだ。そうだったの。」
「ちょっと…反応薄すぎません?」
ごめんごめん、と笑うメイコさんを納得がいかなくて見つめると、また謝りながらはにかまれる。
そんな彼女を仕方ない人だとは思いつつも、私は言葉を続けた。
「つまり、私とメイコさんが出会ってから丁度千日目って事ですよ。」
さすがの鈍いメイコさんも気がついたようで、申し訳なさげな顔をした。
私がこの顔に弱い事だって、この人はちゃんと知っている。そして、それが分かっていながらもほだされる私がいる事も。
「ごめん。ルカ。私覚えてなくて…それで…」
「ああ、もう…分かってます。メイコさんがそういう事に疎いのは知ってます。」
気にしないで下さい、と私が優しく言えばメイコさんは、うなだれた顔を上げる。
「そうね、ルカが来てからもうそんなに経ったのね…」
「長いと感じます?」
「うーん…なんか複雑。まあルカが来てから苦労は増えたけど。」
そんな軽口を叩くメイコさん。
しかし私の耳はしっかりととらえていた。でも毎日楽しいわ、と小さく呟かれた声を。
けれど恥ずかしがり屋な彼女の事だから、それを指摘すればきっと拗ねてしまうかもしれない。そこで私は、メイコさんがよく気持ち悪いと言うポーカーフェースを貼付ける。
「ルカ、気持ち悪い。」
「今のはメイコさんが悪いんじゃないですか?」
「…し、知らないっ。」
こんなあなたで、隣にいるのは私。
そんな日々がこれまでの千日よりも、もっとずっと長く続けばいい。
今の願いはそれだけだ。けれどきっと今の私があるのはメイコさんと過ごしてきた日々のおかげ。
私はそんな過去の事を、ゆるゆると思いだしながら、メイコさんにそっと笑いかけた。
・*・*・*・*・*・*・
本日10月27日はルカ発売から丁度1000日目らしいです!
人づてから聞きましたが、これはルカメイを書かなくては…とちまちま書いていました。
これからもルカさんが大好きです。
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