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切り取る世界[ルカメイ]


メイコさんが写真にハマった。


眺めて楽しむのは勿論の事、自らカメラを持ち歩いて、楽しそうに写真を撮る。

始めの内は、家の中で家族の写真などを撮っていたが、最近は外に出て撮るようになった。

ファインダーを真剣に見つめるメイコさんを見ているのは好きだ。
けれど一日中カメラを手放さないメイコさんに、少しだけ苛立ちを覚える。


そこでリビングでカメラの手入れをしていたメイコさんに、話しかけてみた。


「メイコさん、歌のレッスンを一緒にしませんか…?」

「んー……、悪いけどまたにして。今忙しいのよ。」


そういって私を見ようともしないメイコさん。
忙しい……って、ただカメラをいじっているだけにしか見えないのですが……。


「でもPV撮影も近いですし、練習しておかないといけませんよ。」

「PVかー。私撮られるより撮る方が好きなのよね。」



そんなメイコさんの言葉に、

「……そんなにカメラがお好きですか?」

私の中の何かが溢れた。
溢れ出して止まらなくなり、つい思いの内を口走る。


「メイコさん……、最近私に構ってくれなくなりましたね。」


私がそう言うとメイコさんは、目を丸くした。
ああ、やっと私を見てくれた、と思う私には本当に呆れる。

自分がしている事は、我が儘で、メイコさんを困らせる事にしかならないのに……。


「あの、ルカ?いきなりどうしたのよ。」

「私、カメラに嫉妬してます……。馬鹿みたいに嫉妬してるんです……。」

涙が溢れる。


「カメラに嫉妬って……?」

「そんな風にメイコさんの側にずっといられるカメラが、とても羨ましくて……。」

「そう……」


戸惑ったような表情のメイコさん。
そんな誘うような顔をされては、こちらの理性が持ちそうにない。


「だから、いっそ……」
ああ、加速してゆくこの気持ち。


「いっそ……なによ?」
強がっているような表情も、堪らなく好きだ。ツリ目がちな瞳を見つめる。


ごくり、と息を呑んだ。
今こそ言うチャンスであり、ここを逃せば後はいつになるか分からない。

弱腰な自分を奮い立たせ、勇気を出して言ってみた。




「……私も、カメラを初めてみようかと……、思いまして。あの、メイコさんさえ宜しかったら…」

「本当に!?ルカにも写真の良さが伝わったのね!」

これ以上ない程の笑顔を見せるメイコさん。
さっそくカメラやらフィルムやらを、カタログを引っ張り出してきて、私に見せてくれた。

楽しそうに話すメイコさんを見るのも好きだ。


「でも、ルカが写真に興味あるなんて知らなかったわ。」

「いえ、正直興味があまりありませんでした。」

「え?じゃあ、なんで……」

「好きな人とは、好きな物を共有したいじゃないですか。」


私がそういうと、愛しい人は顔を赤くして俯いた。
そして、要するに私に興味があるのね、という爆弾発言を投下したのだ。


「勿論。私が本当に夢中なのは、いつでもメイコさんだけですから。」

「……私だって、そうよ。」

「メイコさんはカメラにいつだって夢中でしょう……」

少し皮肉を込めた言葉を投げかけてみると、メイコさんは言いにくそうに話し出した。

カメラを始めたのは私を撮るためだった事、私の寝顔を頻繁に撮影していた事……沢山の事を話してくれた。

寝顔なんて撮って楽しいんですか?と聞くと、どうやらメイコさんは私の寝顔が好きなようだった。

直接言って下さればいいのにと思っていると、恥ずかしかったとの返事だった。


「あ、でも、私を撮るためにそのカメラを購入なさったんですよね?」

「え、ええ。」

「私、メイコさんとのツーショットを撮って貰った記憶がないんですが。」

「それは、……言いづらかったのよ。」

「じゃあ、今撮りませんか?ほら、せっかく二人っきりですし!」


撮りましょう?と問い掛けてみると、仕方ないわね、と許可を貰った。


「じゃあ、私が撮るわね。」

「宜しくお願いします。」


メイコさんはカメラを手に取ると、何やら調整をし始めた。
その真剣な表情に、ドキリとする。


「うん、これでバッチリね。ルカ、ほら並んでよ。」

「はい。分かりました。」


彼女に促されるままに、位置につく。
撮影されるのは仕事で慣れているはずなのに、何故だか照れ臭かった。

カメラを机に置いて、メイコさんは私の隣に立った。
彼女の香りが隣にあるというだけで、緊張してしまう。


「メイコさん、あの」

パシャリ、とシャッター音がなった。


「タイミング悪いわね……。なによルカ?」

「す、すみません。」

「それでどうしたのよ?」

「写真って1つの世界みたいだな……と思いまして。」


そう言ってから、じゃあ二人で写ったら二人だけの世界ね、なんていうメイコさん。

本当にそうなったらいいですね。だなんて、言ってあげません。



いつかこの思いを共有できるその日まで。






・*・*・*・*・*・*・*


もう共有してますよ!とかだったりするんだろう。
無駄に長くなってしまった……

メイコはハマったら一直線のイメージ。ルカは……適度にこなす感じ?
要領よさそうです。


それでは、ここまで読んで頂いてありがとうございましたー!




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