貴女の甘さ[ルカメイ] 「メイコさん、またそんな物をお買いになったんですか?」 「いいじゃない。なんだか気になったんだもの。」 そう言って、メイコさんは目を輝かせながらグラスを手にとった。 そして『幻のいちご酒』という、怪しげなラベルの貼られたビンを傾け、液体をグラスに注ぐ。 苺の香りが漂うが、これはきっと無理矢理つけた香りなのだろう。どちらかと言えばチープなジュースのようだった。 「メイコさんはお酒ならなんでもいいんですね。」 「失礼ねー。もしかしたら隠れた銘酒かもしれないわよ?」 ちなみにメイコさんのそういう期待は、いままで当たったことがない。 メイコさんは、変わった物が好きなようで、変な酒を見つける度に飲んでみようと買ってくる。 そして期待を込めて飲んでみるが、大概いつもハズレなのだ。 この間などは、こんにゃく酒を買ってきた。勿論メイコさんの口に合う訳もなく、一口で飲むのをやめてしまったのだが。 「苺だなんて、可愛いじゃないの。色も綺麗だし。」 確かに薄い桃色の液体は、綺麗な色をしていた。 「まあ、綺麗ではありますね。」 「でしょー?」 そう自慢げに言うメイコさん。 じゃあ飲んでみるわね、と言い一口グラスに口をつけた。 そして案の定、沈黙のあと、予想していた通りの言葉が聞こえる。 「ルカ……飲んでみる?全部飲んでもいいわよ?」 どうやら美味しくなかったようだ。 「お口に合わなかったんですね……」 「うん。甘いのよ、すっごく。」 「まあ、苺ですから。ちなみに私は飲みませんよ?」 「えー…、ルカは冷たいわねー。」 そう言い、メイコさんはまたグラスに口をつけた。 やっぱり甘いわね、という言葉付きで。 「メイコさん、もう変なお酒は買うのは止めたらいかがですか?」 「えー、なんでよ。気になるじゃない。」 「だって、キスする時に困るじゃないですか。」 メイコさんは目を丸くした。 キスするときに、苺だのこんにゃくだのの香りがするのは正直勘弁してもらいたい。 まあ、メイコさんとキスできるなら大した障害ではないが、気になるものは気になってしまうのだ。 「ルカって……」 「はい。」 「時々恥ずかしい事を直球で言ってくるわよね……」 「わざとですよ?」 少しだけ赤みがさした頬に、キスをする。 しかし何か物足りず、メイコさんの唇に口づけた。 口の中に、人工的な苺の風味が広がる。 ああ、確かに甘い。 顔を赤くしているメイコさんから、そっと唇を離すと、すぐに照れ隠しが飛んできた。 「キス…したくないんじゃなかったの?」 「そんな事言っていませんよ。メイコさんとのキスは、いつでもメイコ味ですから。」 「調子良いんだから、まったく……」 こちらを、照れ隠しからか睨んでいるメイコさんに私が、 「とにかくその苺酒を飲みきってから、次のお酒を飲み始めて下さいね。」 と告げると メイコさんは呆然としていた。 まあ、自業自得と言った所だろうか。 メイコさんは、嫌いな物からはとことん逃げるタイプなので、苺酒を飲み切るまでにはかなり時間がかかるだろう。 これでしばらくは、彼女の妙な買い物も止むだろうか。 内心、何か見落としている気がすると思いながらも、メイコさんに二度目のキスをした。 それは、甘いキスだった。 (甘いわねルカ。私は酒の為なら……) (え、まさか) (こんなの一気飲みしてやるわ!!) (……私、メイコさんのこういう性格を失念していました。) ・*・*・*・*・*・*・ 苺酒・こんにゃく酒ってなにー?って感じですが、すみません、思いつきです。 なんかこのサイトのルカメイは、キスばっかりしてる気がする…… 私の趣味が(ry ここまで読んで頂いてありがとうございましたー! [*前へ][次へ#] |