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思わぬ病と恋人と休日

風邪を引いた。

本当に何年かぶりで、
こんな時はどうするんだったか…

最終的にルッスーリアに捕まって、
自室大人しくしていろと怒鳴られた。

言われた通り部屋で過ごして、
そろそろ今日も終わろうとしている。

一日殆ど誰にも会わずに、
こんなにゆっくりしたのは何年ぶりか…

明日には治ってしまってるだろうから、
今のうちに寝ようかとベッドに寝転がり、
目を瞑った瞬間だった…



「スクアーロ」



この声、気配…



「スクアーロぉ?」



一番面倒臭いのが来た…




思わぬ病と恋人と休日。





「………死んじゃった?」


「んな訳あるかぁ…」



予想外に弱った声が聞こえ目を開けると、
一瞬間があって何時も通りの笑顔。

すぐ隣で珍しく分けられた前髪から
飴玉みたいな赤色の瞳が覗く。



「なんだ、生きてんじゃん」


「…当たり前だぁ」


「ふーん」



首を傾げて微妙な反応をするが、
一々つっこむ元気は今の俺には無い。

頭を元に戻した。


すると暫く沈黙のままだったベルが、
ベッドに寝転ぶ俺に馬乗りになる。

驚いてその行動をつっこむより速く、
唇に柔らかいものが触れた。

重ねられたソレは角度を変えて、
何度も音を発てては吸い付く。



「お゛、い…今日は止めろぉ…」


「なんで?」


「うつるぞぉ…」



舌で赤い唇の縁をなぞれば、
ベルはそれを合図に素直に口を離す。

離せば離したで二人を繋ぐように糸。

顎を伝う対処しきれず溢れた液を、
名残惜しく舐め取ってやる。



「…なぁ、身体辛い?」


「お前が退いてくれれば、少しは楽になるかもなぁ?」


「やだ…」



首を左右に振り擦り寄るベルは、
何故か指先が何時も以上に冷たかった。

元々低温であるベルの体温は、
ひんやりとしていて気持良かった。

が、その指が今度は俺の髪を掴むと、
今度は痛いくらい引っ張る。



「痛っ、てぇ…!」


「風邪とか意味わかんねぇ!バカのくせに風邪なんか引くな、バカっ!」


「…無茶言うなぁ」



多分柄にもなく心配してるんだろう。

だから今回は『バカ』って言葉も
聞かなかった事にする。

胸の上に乗った金髪を撫でて、
頭のキラキラを外す。



「あっ…」


「一緒に寝るか?」


「…ん、」



ベルを持ち上げ隣に転がすと、
『寒い…』とモゾモゾ近寄ってくる。

握られた手は先程同様に氷みたいで、
なかなか暖まらない。



「なんでこんなに冷たいんだぁ?」


「知らね、…もしかしたら、ずっと外に居たからかも…」


「はぁ?馬鹿かぁ…?お前のが風邪引いたらどうすんだぁ…」


「お前の所為だもん」


「俺?」


「だって、お前の分の任務も俺が行ってきたし…、だ、から……」



それが普段から職務怠慢である、
我が儘王子の台詞とは到底思えなかった。

ボスに甘やかされているのを良い事に、
普段殆ど仕事をしようとはしない。

たまに気が向けば俺に着いてきたり、
遊び気分でSランクの任務を入れたり…


耳まで真っ赤になった顔で、
『文句あるか』という目線を向ける。



「お前がなぁ…、働き者じゃねぇか」


「う、うるさいなッ!」



そう言って口を塞ぐように、
ベルから本日2度目の不意打ちのキス。

今度ばかりは手加減などせずに、
ベルに覆い被さりキスに応えてやる。



「はっ、移ったら、責任とれよ?」


「おいおい。お前からしてきたんだぁ、自業自得だろぉ?」


「うっせぇ…」


「こんな事、滅多に無いからなぁ?」


「っん、だよ…お前、元気じゃん?」



そう言ったベルは、
見惚れる綺麗な笑顔を見せる。

ホントに可愛い奴だと思った。







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あきゅろす。
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