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★君のキスが睡眠薬

少し前、『寝れない』と言って、
医者にみてもらったのは覚えていた。

それでも何も言わなくなったから、
もうとっくに治ったのかと思ってた。


兎に角、駆けつけたときには、
水を流す音と繰り返される嘔吐。

白いタイルに毒々しく広がる赤色の粒。

空っぽの薬瓶。



「ベル、」


「ん…?スクアーロじゃん、なに?」


「なにじゃねぇだろぉ…」



大して悪気も無さそうに笑って、
『寝ようと思っただけ』だと答えた。

最初は呆れてただけだったのが、
段々心配になってくる。


コイツは…

こんなにも穏やかに笑っただろうか?



「おい、お前…どれくらい飲んだぁ?」


「…分かんない、全然覚えてない」



崩れ落ちているベルの高さまで屈み、
冷たい頬に手を添えて尋ねる。

元々白かった肌が、
更に白くなった気がした。



「…ずっとこうやって寝てたのか?」


「…悪い?」


「悪いもなにも…、死ぬぞ?」

「……別に」



じっと俺を見つめたまま、
『そんなの怖くない』と言われた。

血に染まったように赤い瞳は、
嘘は吐いているようにはみえない。

妙にはっきりしていた。



「寧ろ永眠出来るなら、そっちのが楽そうだし?いいよ、別に…」


「縁起でもない事言うな」


「もう分かったから、運んで?」



面倒臭そうに返事をすると、
偉そうに両手を広げて催促する。

ベッドまで運べという意味だろう。

仕方無く抱き上げてやれば、
胸に顔を擦りつける。



「んー…気持ち良、い…」


「あ?」


「…お前の体温って、安心する」


「そうかぁ」


「う、ん…」



眠そうにゆっくり喋るベルは、
そろそろ限界らしかった。

なのに、引き離そうとしても、
腕を首に回したまま離れようとしない。



「う゛お゛ぉい、離せぇ…」


「やだ、このままがいい」



そう言って更に力を込められては、
無理に離すのは気が引けて溜め息を吐く。

なるべく優しく頭を撫でれば、
擽ったそうに弱く笑う。



「心配掛けさせといて、人の身体椅子代わりかぁ?」


「だって俺、王子だし?」


「…だな」



反論するのも馬鹿らしくて、
我が儘王子を寝かせる事に専念する。

細い身体を抱き締めて、
何度も何度も頭を撫でる。

ベルがゆっくり顔を近付けて、
チュッと小さな音を立てキスをする。



「おやすみ。スクアーロ。」


「ああ、」








君のキスが睡眠薬










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