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溢愛のキス



「お前って、俺見ててなんも思わない?」



突如投げ掛けられた疑問に、
視線だけを上げる。

そこには机に両肘を付き、
向かい側でベルが首を傾げていた。

何時ものシャツが右肩だけずり下がり、
歳の割に細すぎる肩が晒されている。

白い肩から首を辿って指を這わせれば、
甘い溜め息が弱々しく漏れた。



「襲って欲しいのか?」


「ちげぇーし、盛ンなバカ鮫」



不機嫌な眼差しで見つめてる(であろう)
ベルの端正な顔が近い。

迷わずその唇に軽くキスをすれば、
擽ったそうに声をあげて笑う。

何時もの狂気めいた嫌味な笑いでなく、
年相応のガキのような無邪気な笑顔。

コレで殺戮王子だと気付く奴が居たら、
そいつはきっとかなり優秀だ。



「なぁ?どうなの?」


「好きだぜ?」


「…、何処が?」


「全部。…バカみたいに細い身体も、生意気な態度も、血に溺れてるテメェも」


「……ふぅーん」



自分の頬を撫でる俺の手を掴むと、
礼儀もなく机を跨いで膝の上に乗る。

猫みたいに丸くなって、

聞いたくせ解答には興味を示さず、
俺の髪を指先に絡めて遊びだす。



「何なんだぁ?」


「んー?別に…、ちょっと確かめときたくて、さ…」


「確かめる?」


「うん」



細い指に巻かれた銀髪が、
手を離すとほどかれまた巻かれ…

何度も何度も繰り返し行われる。



「ホントに好きかどうか?」


「お前は俺が信用出来ねぇ、ってかぁ?」


「違う違う、俺が」



返答にクスリと笑い机に突っ伏すと、
自信なさげに弱々しく呟く。

それはそれで…
あまり良い理由とはいえない。

ベルの俺への気持ちが薄れた、
…と、いうことなんだろうか?



「…お前が、かぁ?」


「そう、俺。なんか、間違ってるのかなぁ、って思ったから」


「間違う?何をだぁ?」


「俺がお前を好きだなって思う所って、凄く些細な事だったりするわけ。」


「……はぁ?」



未だに話の意図が分からず、
素直に疑問めいた言葉が漏れる。

そんなことも気にせずに、
ベルの紅い唇は言葉を奏で続ける。



「それが正しい事なのか、よく解んなかったから…」


「解んないって、お前…好きなもんは好きなんだから、正しいも何もねぇよ」


「そういうもの?」


「だろうなぁ」



『そっか』と呟くと、
納得がいかないのか、口が歪む。

それでも『好き』なんて感情は、
そんなに深く考える事ではない気がした。



「お前は俺が嫌いなのかよ?」


「…ッ!?ち、違っ……ん゛!?」



焦って振り返った顎に手を添え、
ごちゃごちゃ煩く不安を漏らす口を塞ぐ。

金色の前髪をかき上げると、
素直に潤んだ瞳と視線が絡んだ。

抵抗無い唇を割って舌で歯列をなぞれば
ビクビクと反応する身体が愛しい。



「んッ、あ、はぁ…、ッ…」



口を解放してやると、
酸素を求めて咽が上下する。

それを更に甘噛みすれば、
ベルが小さく息を呑む。



「お前が何悩んでるかしらねぇけどなぁ、俺は今更お前を手放してやる程、優しくねぇぞぉ?」


「…はッ、傲慢」



挑発的に目を細めたベルは、
身体を傾けて胸に顔を寄せる。



「安心した。…俺、お前のそういうとこ、やっぱり大好き、間違っててもいい」




そう呟いた恋人が、
もう不安にならないようにキスを…

俺のモノだという印を、










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あきゅろす。
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