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一緒に堕ちましょう(綱獄)

小さく礼を言って扉を閉めると、
隣で思わず洩れる溜め息。

けして誰も悪くなはなかった。

偶々無差別に発砲されたされた銃弾が
無防備になっていた左手首を霞めただけ。
そんなに傷も深くないそうだ。



「だからね、隼人。そんなに気にしなくて良いよ?」


「いや、10代目が怪我したのは、俺の不注意の所為です。」


「もぉ…、大丈夫だから」



『痛くないし、ね?』と笑っても、
何だか納得がいかない様な顔。

そういう顔嫌い。

この数年間どんなに俺の支えだったか…
君は分かってないのだろうか?

君は俺を好きだなんて言うけれど、
時々、『10代目』という言葉に縛られて、
好きと忠誠心が混合してる様な気がする。


だから、



「やだなー、それ。」


「…はい?」


「何で隼人は、何時までたっても俺を名前で呼んでくれないの?」


「そ、れは…」


「………結局遠いよねぇ、俺達。」



正直、愛しくて堪らないのだ。

慕われる事はけして嫌じゃない。

それが例えどんな形であれ、
想い人が隣に居るだけ幸せなんだろう。


でも、呼び方ですらもどかしくて、
それじゃ俺は足りないと焦る。

好きで好きでしょうがないから。



「隼人」


「貴方は、遠いですよ。」


「なんで?」


「優しさとか、強さとか、俺じゃ適わないモノを沢山持ってる。」


「…」


「だけど、ずっと傍に居たいとか、自分だけ見ていて欲しいとか…自分勝手な事を考えてる…。あなたが好きだから。」



その真っ直ぐな言葉は痛かった。

俺が人に優しくするのは、
誰にも盗られたくないからだ。

他人に感心を向けられたくないから…

それだけだ。


そんな自分の中に渦巻く独占欲に、
君は適わないと言って笑って、

好きだ、と言った。



「10代、目…?」


「ごめん…、俺…」



引寄せて揺れる銀髪に指を透して、
少しだけ高い頭を抱え込む。

抱き締めて、抱き締めて、
君だけは居なくならないって安心させて?

愛してるなんて勘違いしてるのは、
もしかしたら俺なのかな?

確かめるように口付ければ、
心が潰れるかと思うほど痛くて。



「愛してる、から…」



ちゃんと君に伝わるように、
自分に言い聞かせるように呟く。


『愛してる』という言葉で君を縛る。



俺なんかより、遥かに優しい君は、
これできっと俺を見棄てたりできない。



嗚呼。

だから俺はダメなんだ…





「俺はずっと傍に居ます。」


「うん。」





死ぬときは、一緒に…







一緒に堕ちましょう






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