その他の小説 2年トリオin放課後(金色のコルダ・土浦、日野、月森) 屋上から流れる美しいメロディー。 気持ちを乗せて響く美しいバイオリンの旋律。 それは風に乗って、学校中に響き渡った。 どこまでも繊細で、どこまでも感情深く――――。 〜2年トリオin放課後〜 「ふぅ。」 通して一曲を弾き終えた香穂子は閉じていた目を開いてほっと息をつくと口の端をにっと持ち上げて 「・・・今の、すっごく思い通りな音だったかも!!」 自分の弾いた音が良かったことに喜んだ。そして、その直後 「って・・・えぇっ!!?」 激しく驚いた。 いつの間にか辺りは真っ暗。バイオリンを弾き始めた時は聞こえていた部活中の生徒の声も聞こえない。 慌ててケータイを取り出してみると時間はすでに9:30を回っていた。 「う・・・そでしょ?」 香穂子は呆然として言った。 (確かに今までだって時間を忘れてバイオリンに没頭しちゃうことはあったけど・・・。 でも、ここは屋上で、しかもさすがにこの時間は・・・信じられない。) 香穂子は、もしかしたらケータイの時間がずれたのかも。と思い、とりあえず室内の時計を見ようと校内に戻った。 静かすぎる校内。 これは何と言うか・・・怖い。。 思い出したくないのに、ふと天羽さんが言っていた学校の怪談を思い出してしまう。 急ぎ足で階段を駆け下りると、自分の足がやたらと響いてまるで後ろから誰かが追ってきている様な錯覚に陥る。 廊下についている蛍光時計を見るとやっぱり時計は9:30をすぎていた。 (さっさとこんな怖いところからは立ち去ってしまおう。) 香穂子がそう思って走ろうとした時、 ポンッ。 肩に何かが触れた。 「キャ〜〜〜〜〜!!!!」 香穂子は怖さのあまり大声で叫んでしまった。 声が静かな校内に響いて、それがもっと怖さを増幅させ、香穂子はその場にしゃがみこんだ。 「ゴメンなさいっゴメンなさいっ!!悪霊退散!南無阿弥陀・・・」 ガタガタ震えながらそんな事を言っていると、 「何をしている、日野。」 「ってかワリィ。いきなり肩叩いて。」 聞きなれた声が上から降ってきた。 「・・・・・・。ふへっ?」 香穂子はすっと上を向いた。 するとそこには同学年の、一緒にいればいつも喧嘩ばかりしている2人組みで同じコンクールに参加している男子の姿があった。 「ぶっ」 土浦が香穂子のふぬけた声を聞いてふきだした。 「/////も、もー!!土浦君!月森君!突然驚かさないでよ!!!」 香穂子はバッと立ち上がると叫んだ。 「いや、だから悪かったって。まさかあんなに驚くとは思わなかったんだよ。」 「・・・俺は何もしていない。そうゆう所が考え無しだと言うんだ。土浦は。」 「はぁ!?何だと月森。お前こそ声をかけた方がいいって思ってたんなら俺より先に話しかければよかったじゃねえか!!」 なんだか険悪なムードになっている2人に、割り込むようにして香穂子が言った。 「でも、良かったぁ。真っ暗だし、誰もいないし、本当に怖かったんだ///。 2人が居て良かったよ。・・・そういえばなんで2人してこんな所にいたの?」 「一緒にいた訳ではない!」「一緒にいた訳ねぇだろうが!!」 なんとなくハモっている。 それが気に食わなかったのか、月森と土浦は無言でにらみ合った。 そしていったん間をおいて香穂子に言う。 「俺は今日は委員の奴が2人とも用事で仕事を代わりにやってたんだよ。 終わった頃にはだいぶ遅かったし久しぶりに店のピアノ弾きたかったから練習しないで帰ろうと思ってたんだけど、 ファータ像の辺りでお前のバイオリンが聞こえたから来てみたんだよ。」 「・・・俺は練習室から出た時に日野のバイオリンの音が聞こえて、 なかなか終わる気配が無かったから上がって来たんだか・・・。」 「そこで‘たまたま’月森と会ったたんだよ。」 土浦と会ったまでだ。」 「「・・・・・。」」 「ハモってんじゃねぇ、キモいんだよ!」 「俺も今、ほとんど同じような事を思っていたところだ。」 またまた険悪なムード。 「えっ・・・。じゃあもしかして2人とも私が練習終わるの、待っててくれてたの?」 そしてまたしてもその雰囲気をぶち壊す香穂子。 「そっかあ///嬉しいな♪ありがとう!2人とも。じゃあ途中まで一緒に帰ろうよ。」 「「・・・ああ。///」」 今度はハモッても何も言わなかった。 土浦が香穂子の方を見て言う。 「それにしても・・・荷物、多くねえか?」 香穂子が今、手に持っている物はバイオリンだけ。 でもそれはさっき驚いた拍子に全部落としてしまったからで、本当は大きい紙袋にいっぱいの楽譜と、鞄にいっぱいの教科書と楽典。 「いつにも増して楽譜、多いんだな。」 新しい本物のバイオリンになったことで張り切っている香穂子のために、 リリがいつもよりたくさん楽譜をくれたとはさすがに言えなくて、香穂子は軽く笑釈した。 「えへへっ。バイオリンも変わったし、前よりもっと頑張らなきゃって思ってるんだ!」 そう言いながら香穂子は落としてしまった荷物を拾おうとした。 するとそれより先に土浦が紙袋を拾って言った。 「重いだろ、持ってやるよ。」 「あ、ありがとう。うん・・・実はちょっと重たかったかな。鞄にもいろいろ入ってるし。」 そう言って香穂子は鞄を持つ。 すると今度は月森が流れ作業のようにスムーズに香穂子から鞄を取った。 「全くだ。楽典と教科書だけでこんなに重くはならないだろう。」 「えっ・・・。あ、月森君、ありがとうねっ。」 なんだかんだで香穂子の持ち物はずっと持っていたバイオリンだけになっていた。 帰り道、土浦が香穂子に言った。 「そういやぁ今日、最後に弾いてた曲、良かったぜ。」 「ほんとう!?聴いてたんだ!あれ、私も気に入ってるんだ。あの感じを忘れないようにしなきゃね。」 「俺も聴いていた。確かに日野らしい演奏だったと思う。でも、前と少し変わったようにも感じた。」 「うん、そうかも・・・。バイオリンが変わったから・・・かな。 でも、やっぱり音楽って楽しいよね!音を楽しむ、かあ。ぴったりだよね!音楽って言葉って。」 にっこり笑って楽しそうに言う香穂子に、土浦と月森はほんのり表情が穏やかになった。 気が付けば香穂子の家の前に着いていた。 「あれ?2人とも、もっと前に曲がるはず・・・だよね?ゴメンっ。おくってもらっちゃったね。」 「別にかまわない。」「気にすんなって。」 香穂子は2人から鞄と紙袋を受け取った。 「それと、夜遅くまでバイオリンを弾くのはかまわないが、一応夜は気をつけた方がいい。」 「めずらしく気が合うな、月森。俺も同感だぜ、日野。何なら一緒に帰るし、いつでも言えよ?」 「うんっ。分かった。月森君も土浦君も、今日はホントにありがとう。 また今度3人で合わせたいな♪それでまた一緒に帰ろうね!!」 香穂子の笑顔に2人はただ、うなずいた。 でもその数秒後、歩く早さをわざとずらしてきた道を2人はばらばらに帰っていった。 そんな2人を見送っていた香穂子は思った。 (あの2人、いっつもそっくりなのに、気づいてないのかな・・・。 似てるんだからきっと気も合うとおもうんだけどなぁ。) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 この三人、可愛いです。 気が合わない様で凄く似てる二人と、その仲介役みたいな日野ちゃんが。 あと、冬海ちゃんも好きです。可愛いです。 ここまで読んで下さった方、本当に有難うございました。 少しでも楽しんでいただけていれば光栄です。 [*前へ][次へ#] [戻る] |