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この人ならきっと(金色のコルダ・日野+冬海)

憧れる人が居る。同じ女性で、優しくて前向きで、度胸がある―――。

  私に無いものばかり持っていて、私自信にも元気をくれる、とても憧れの人―――。





「お、日野、ちょ〜ど良いところに居るじゃねえか。」

金沢はたまたま職員室に入ってきた香穂子を見つけ、言った。

呼ばれた香穂子が何だろう?と金沢の元に行く。

「何ですか?金沢先生?」

頭に疑問符をつけている香穂子とは裏腹に金沢は、にやっと笑って自分の机を指差した。


そこにあった物は・・・それはもう大量のノート。

まさか!!と香穂子は身構えた。

が、非情にも金沢が言った言葉は香穂子の思った通りだった。

「このノート、音楽塔の教室に持って行ってきれねぇか?」

「嫌です!!貴重な昼休みをそんな事で潰したく無いんで」

香穂子は即効で断固拒否。金沢は一つため息をついて言った。

「しゃ〜ねえなぁ。パン一個奢ってやるから。」

その言葉で香穂子は、ハッとする。

(そういえばまだ購買行ってない!!早くしなきゃパン、売り切れちゃうよっ。)

「・・・分かりました、先生。じゃあ音楽塔行くんで代わりにクリームパン買っといてくださいね。」


そんな訳で交渉成立。

たくさんのノートを持った香穂子は音楽塔へ向かった。


 〜この人なら、きっと〜


「あなた、何も分かってないのね!!」

音楽科の二年の人が何人かでたむろっていて、その中の一人がきつい調子で声を張り上げる。

「す・・・すみませ・・ん。」

囲まれている笙子はびくびく怯えながら言った。

「柚木様はあなただけに優しい訳ではないのよ!」

「は・・・はい。あの、分かっています。」

「だったらどうしてこんな物を渡そうとしたのよ!!」

そう言って2年生の一人が笙子の持っていた袋を取り上げた。

「そ・・・それは母が、前に助けて下さった時のお礼をしなさいと・・・言っていたので・・・」

「やっぱりあなた、何も分かってないわ!!柚木様は 「ねぇ、それ、飛んだ言いがかりじゃない。さっきから。」

笙子に詰め寄る2年に割り込んだのは、たくさんのノートを持っている香穂子だった。


言葉を止められた音楽科の生徒はくるりと香穂子の方を見て言った。

「あら、あなた、確か普通科の日野さんよね。何しているのかしら、こんな所で・・・。」


「ノート運ぶように言われたの。そんな事より、それ・・・、返してあげなよ。」

香穂子は両手がふさがっているのであごで相手の持っている袋を示した。

「なっ・・・。私たちはただこの子に本当のことを教えていただけで・・・」

「ならそんなリンチするように囲まなくたっていいじゃない。しかも1年生に。
 ・・・柚木先輩、好きじゃないだろうなぁ、こうゆう事。」

最後の言葉はぼそっと言う。

「!!・・・返せばいいんでしょ?」

袋を持っていた生徒が笙子に袋を渡した。

「冬海さん、いい事?あんまり図に乗らないようにね。」

そう言って振り向くとさっさと行ってしまった。

音楽科の生徒たちがさってから香穂子はぼそっと

「だから図になんて乗ってないって。」

と言った。そして笙子の方を見るとホッとしたような顔をした笙子と目が会った。

「あ、あの・・・。ありがとうございました、香穂先輩。」

香穂子は、にこっと微笑んで返す。

「いいの、いいの。気にしないで。柚木教の恐ろしさは私も身をもって実感してるから。」


その言葉に笙子はくすっと笑ってから言う。

「あ、でも・・・何かお礼が・・・したいです。」

「ほんと?・・・じゃあこのノート、少し持ってくれない?」

そう言って香穂子は持っていたノートの山を見た。

 
そんなこんなでノートの山を半々に持って2人は音楽科の廊下を歩いている。

やまの様なノートと普通科。よく分からないコラボレーションに周りの音楽科の生徒がちらちらと見てくる。

(ま、もう慣れたから良いけどね・・・。)

香穂子がそう思いながら歩いていると、隣を歩いている笙子が本当にすまなさそうに言った。

「香穂先輩、すみません。・・・こっちの棟に普通科の人が居る事・・・めったに無い事なので・・・。その・・・。」

香穂子は笙子の方を向いて、小さい声で言う。

「ああ、気にしてないよ。んー、でも、こうゆう雰囲気って無くなればいいのにねぇ。

 普通科にしても音楽科にしても。」

「・・・はい。そう思います。」

少し間があって、香穂子が言った。

「あ、だから私たちが居るのかも。」

「えっ・・・?」

笙子は香穂子の方を見て、聞いた。香穂子は納得したように頷いて、笙子に説明する。


「普通科の土浦君と私が、コンクールに参加して、その事で普通科の人も音楽に興味を持ち出して、
音楽科の人と話したりして、そうして行くうちに少しずつ音楽科と普通科の溝埋まっていく。
そうゆうのって、ステキじゃない?」

「あ・・・なるほど。・・・ステキです。そうやって、少しずつでも、・・・お互いが仲良くなっていくと・・・いいですね。」

「だよね。あ、ここのクラスだ。」

気が付けば頼まれたクラスの前に着いていた。

が、

「「・・・・・・。」」

「開けられないねぇ。」

香穂子が言う。

「・・・はい。」

笙子も困ったように返す。

「じゃぁ、笙子ちゃん、1回私の方にノート全部乗せて、ドア開けてくれない?」

「えっ、重いですよ。」

「大丈夫。どうせ笙子ちゃんと会わなかったらここまで一人で運んでたんだし。」

では・・・。と笙子が香穂子にノートを渡そうとしていると、

「何をしている?」

と、後ろから聞き覚えた声が。

「あ、月森君。ここのクラスなの?丁度良かった。
 このノート、ここのクラスのなんだけどドア、開けてくれない?」

香穂子がそう言うと、月森はドアを開け、2人のノートの山を取り、
 
「後はやっておく。わざわざすまない、こんな所まで。」

と言って、中へ入っていった。

「ありがとう。月森君。」

香穂子はそう言ってから笙子の方を見て言う。

「さて、私たちも戻るとするか。ありがとうね笙子ちゃん。
 おかげですっごく助かっちゃった。」

「あ、いえ。私も・・・嬉しいです。香穂先輩の役に立てたなら。」

「笙子ちゃん!!かわいい!!あ、そうだ、クリームパン!!」

それじゃっと、言うと香穂子は走って去っていった。

「クリームパン?」

そう呟いて、疑問符を出した笙子は、去っていった香穂子の方をみて思う。

(やっぱり、香穂先輩はすごい。少し前までの月森先輩なら、絶対あんな事しないもの。

 ・・・音楽科と普通科の溝を埋める。あの先輩ならきっと。ううん、絶対、できる)


笙子はそう、確信した。そして、自分もコンクールを通してその中お手伝いになれる事を嬉しく思った。



  憧れる人が居る。同じ女性で、優しくて前向きで、度胸がある―――。

  私に無いものばかり持っていて、私自信にも元気をくれる、とても憧れの人―――。


  あんな人に・・・私もなりたい。そう、心から思った―――。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜
本当に可愛いと思う二人の話を書いてしまいました。
きっと冬海ちゃんは日野ちゃんの影響をすごく受けてると思います。

いや、みんなそうなのかもだけど、やっぱ女の子同士思うところも強いと思います。

ここまで読んで下さった方、有難うございました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。



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