nvl・L
デイとの勤務・2
休憩中、俺達はいつも他愛のない話をする。
デイを見ると業務の間に乱れた髷を直すためか、髪を下ろしていた。
初めて見たデイの髪型に思わず手を入れ髪をすくう。
すくった髪は重力に従いサラサラと落ちていった。
蠍『ほんと髪長いな。鬱陶しくないのか?』
遊ばれている髪に気にする様子もなく
『もう慣れたし、切るのも面倒だし、うん。
気が付いたら長くなってた。』
と答え、サソリの好きなようにさせていた。
髪を触れる俺に、デイは笑顔を向ける。
蠍『ほう…。女みたいだな。』
泥『…はぁ!?』
しばらく大人しくしてデイは、思いもよらない言葉に驚く。
『正直、最初俺もイタチも女と思ったからな。』
と続けられた事実に、デイは不本意だとそっぽを向いて膨れた。
確かに背も高いとは言えないし(髷込166p)
髪も長いし、体の線も細いほうかも知れないが……
(……それはねぇよー旦那ぁ……)
少し落ち込み気味になっていた。
その様子に、サソリはクスッと笑う。
蠍『……でも、この髪はサラサラしていて好きだな。』
泥『…!?…なんか旦那に言われると照れるな!』
サソリの言葉に勢いよく振り返る。
落ち込み気味であったところ、一瞬にして気分が上昇したようだ。
余程褒められたことが嬉しいのか顔を赤らめて微笑む。
デイの百面相を見るだけで、サソリは僅かな休憩時間でも、疲れを取ることができた。
**********
早朝6時。
業務を終える時間を迎えた
。
今日は、今までにないほど時間が早く過ぎたように思う。
欠伸をしながら帰る用意をしているデイを見て、サソリは少し物足りなさを感じていた。
蠍『もう帰るのか?』
サソリの問いに、デイは涙目になりながら答える。
泥『ん、速攻帰って寝るー。
あしたは休みだし、ゆっくりできるぞー、うん。』
サソリとはうってかわり、意気爽々としたデイ。
デイの言葉に、次はデイとコンビではないことを思い出していた。
蠍『そうだったな。次はイタチと俺だったな。』
泥『頑張れ旦那ー。でも、そんなに深夜入って、大学は大丈夫なのかよ?』
蠍『心配ない。俺は既に卒業単位は取ってるからな。今はゼミだけだ。』
泥『お見逸れしました、うん。じゃあなー旦那。』
くるっと回って、デイは待機室の扉に手をかける。
蠍『……バイクで送ってってやろうか?』
こんなに引き留めようとするのはサソリらしくなかった。
泥『んー?近いし、別にいいよ、うん。』
蠍『近いのか?家はどこだ?』
泥『ハハッ。んーどこでしょう?』
ニコニコと笑いながら待機室を出ていくデイ。
蠍(くそっ、何だよ今の。つか、置いてきやがった。)
急いで鞄を掴み、デイを追いかけた。
待機室の扉を開き、店の外に出たが、すでにデイの姿は無かった。
(あの野郎、覚えとけよ。)
溜め息をつきながら、バイクの元へ向かう。
バイクにまたがり、走り出そうとした時…
『旦那ーー!』
聞き慣れた声が聞こえた。
驚いて辺りを見回す。
そして、ふと視線を上げると、コンビニの隣のアパートの階段から見慣れた金髪が見えた。
泥『また明後日よろしくー。じゃあな!』
手を振りながら、2階の隅の部屋に消えていく金髪。
いつか見た、ゴミ袋を抱えた金髪の女らしい姿を思い出す。
ああ、そうか…俺が見たのは……。
しばらくデイの消えた部屋を眺めた後、サソリはバイクを走らせた。
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