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『青山さんに御同行をお願いしたいのですが…』
久しぶりに皐月さんから連絡が来たと思ったら、皐月さんが最近吸収合併したホテルのプレオープンの誘いだった。…正直、そんな場違いな所になんて行きたくは無かったが、久しぶりに皐月さんに会えるのでつい承諾してしまった。
煌びやかな会場、着飾った人々、溢れ出す笑い声。
皐月さんにエスコートされ、会場に入るや否や、皐月さんに挨拶をしようと大勢のお偉いさんが詰め寄る
こういう場所でビジネスが生まれたりするんだよね、邪魔にならないよう、私はその場からこっそり距離を置いた
「あれ、悠月だ!」
周りをぐるりと見回していると、直ぐそばに悠月がいるのがわかった。高そうな生地のシルバーのスーツに黒い細いタイをしている。心細い中、既知の人物と会えたのでつい人混みをかきわけ、その人物に声をかけてしまった
悠月「…使里樹!、」
悠月は少し驚いた様子を浮かべるも、なんだか機嫌がよろしくない様子だった
「悠月も来てたんだね!」
悠月「いや寧ろ何でお前がいんだよ、」
「確かし。」
悠月「納得してんじゃねーよ、」
「ちょ、悠月なんか機嫌悪いっ!」
うっせ、そう呟くとそっぽを向いてしまった。何か癇に障ることでもあったのだろうか
「悠月…、怒っちゃ嫌だよ、ねえ、こっ、ち向いてよぉ…」
私が泣きそうな声で呟くと、悠月はすぐさま振り返った
「ふっ、単純な奴め」
悠月「て、てめえ…!!」
ふるふると怒りで肩を揺らす悠月に、あはははと爆笑していると、私たちの周りに知らない香りが漂った
?「ちょっと悠月!!誰なのこの女」
真っ赤なドレスを靡かせて登場したのは「中園ユリカ」だった、芸能人に詳しくない私ですら知ってる今をときめかすスーパー芸能人!全く興味ないけど。
ユリカ「……フフ、」
じとっと頭のてっぺんからつま先まで私を舐めまわすと哀れむような視線で笑いだした、
ユリカ「どっから湧いたのか知らないけど、貴方、自分の居るべき場所に帰りなさい、目障りなのよ、汚らしい!!」
自己紹介なんてなんのその、会った瞬間から吐き捨てるように言われた。その直後、二人の声が重なって聴こえる…
悠月「おい、ユリ…
「青山さん!申し訳ありませんでした」
言葉が被る。
優しく肩に回された腕の主は皐月さんだった、
皐月「つい長引いてしまって…あれ、悠月じゃないか」
悠月「兄貴…、」
ユリカ「!!?、」
皐月「ああ、中園ユリカさんですね、ご活躍は陰ながらですが拝見させて頂いております。」
皐月さんがいつものように柔らかい笑みを零し、握手するため手を差し出すと、中園ユリカは引きつった笑みから一瞬で華のような笑みを咲かせ、それに応じる。暫く談笑した後、皐月さんは悠月にきちんとエスコートしてあげなさい、と述べると私の腰に手をあて、ホールへと促してくれた。
ーーさっき中園ユリカに罵られた時。悠月が何か言い返してくれた気がした、機嫌悪いと思ったのになあ…
ぼんやりとウェイターさんからシャンパンを二つ頂くと、そばに居た皐月さんに渡そうとするも、皐月さんはなにやら派手な叔父さんとフランス語で込み入った話をしていた。これ、どうしよ…、どっか置き場所ないかな、だなんて辺りを見回していたらバルコニーが目の前に見えた。ここなら皐月さんにも直ぐ分かるし、このシャンパン美味しすぎるから二杯飲んで待ってよう…えへへー、だなんて思いながらバルコニーにへ出た。
ひんやりとした夜風が人ごみで纏わり付いた熱気を冷ましてくれる
「また勝手にどっか行きやがって…、兄貴心配するだろーが。」
はっと気付いた瞬間、手に持っていたシャンパンが取り上げられる
「悠月!」
悠月「なにお前、二杯飲むつもりだったのかよ…」
呆れた顔で飲み干すと、私と視線を交えることもせず、ただ外に広がるネオンを無表情に見つめている
悠月「お前さ…。さっき言われた事とか気にしてないワケ?」
「え?」
さっき言われたこと?…もしかして中園ユリカのことかな…
「ああ、」
悠月「……、」
「そりゃあショックですよ!腹たつ、って言うよりも初対面であんな事言える人って存在するんですね、純粋に驚きました、」
悠月「……、」
「確かに私は中園ユリカに比べたら残念なルックスですよ、でもだからと言って私の価値が彼女より劣ったものだなんて思わないし。私は私だから…。ていうか、これ教えてくれたの悠月じゃん、」
ねっ、そう明るく悠月を見上げると、今度はちゃんと私に視線を合わせてくれていて…
あまりにも優しい顔をしていたのでつい身体中が熱くなる、
悠月「使里樹っ…」
悠月の顔が近づく、互いの鼓動が感じられる程その距離が縮まった時。
ユリカ「悠月ー?!、もうどこにいるのよー!、」
途端に吹き出してしまう私たち。
「お迎えが来たようですよ」
悠月「園児か俺は」
またね、だなんて別れを告げると、すれ違いざまに、耳元で告げられた一言。
連絡する。ーー
声の主を確認しようと視線を追うと、既にその主は片手をひらひらと振りながらホールに戻ってしまった。
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