Arabians lost
11◆
11◆cartis nile
魔法なんて呪文を呟けば効果を発揮できるものだと思っていたのに‥
深い溜息をつく。マイセンとミハエルから元の世界への帰還するための情報を得てからというもの、気分が上がらない。魔法を解かなければ帰れない‥か。
正直無理じゃね?その魔法をかけた張本人が一体誰で、現在何処にいるのかわからないのに‥。
(はあ‥‥、)
ーー
今日は夜から酒屋の仕事なので朝から図書館にこもる。さすが犯罪大国だけあって揃えられている本に毎回ぞっとさせられる。ふと目に止まった「効率の良い××シリーズ」はギルカタールでベストセラーらしい。全巻50冊あり、××に当てはまることが全て日本の刑法に反すること(暗殺、拷問、殺人、窃盗、薬物、死体遺棄など)なので最早笑うしかない。
とりあえず魔法に関する書物は豊富だから、時間を見つけて読破しよう。何かわかるかもしれないし。前進あるのみだよね!
私は仕事の時間になるまで片っ端から本を引っ張り出すと、読み漁っていた。
ーー
夜の酒屋にて
(‥‥‥なんでこうなった)
右から左、左から右へとひっきりなしに私の眼球が動く。恐怖のため体が硬直した結果、唯一動けるのが眼球だけだった。
シャーク「暗殺者だよ、こいつ。カーティス・ナイル。流石のアンタでも知らないなんてこたあねぇだろ?」
私のことを迎えがてらに飲みに来た(飲みがてら迎えに来た可能性の方が遥か高い)シャークが私に目の前にいる男を紹介する。
(あああ、暗殺者だと‥?)
紹介されても困る。「仲良くして下さい?」、「殺さないで下さい?」。なんて挨拶すればいいんだよ!
どちらにしろ命はなさそうだ。
カーティス「誰なんです、この女は?いいから早く酒を持ってきなさい。殺されたいんですか?」
ひええ、え、!!暗殺者って旧ソ連のKGBやCIAみたいなのだよね?恐っ、でも目の前に佇むのはぱっと見、普通の青年だ。本当に普通の青年と変わりない、むしろ喋った感じからして「殺されたいようですね」
(!?、)
キラリと光る細いナイフをいつの間にか取り出しチラつかせるカーティス。私はすぐさま彼のオーダーした酒を取りにダッシュした。
シャーク「‥‥おい。あんまり虐めてくれるなよな。後がめんどくせーんだよ、」
カーティス「誰なんです?やかましい女だ。貴方のお知り合いでなければとっくに殺ってました。」
シャーク「あー、あれうちの下宿人ってところだ。一応、俺の客のうちの一人だから殺すなよ?」
カーティス「ご冗談を。僕が手を下すまでもない。部下に殺らせます。」
シャーク「それをやめろってんだよ、」
カーティス「ああ、でも貴方がこの依頼を受けてくださるのなら、あの女には手を下しません」
シャーク「‥‥拒否ったら?」
カーティス「面倒ですが、私が殺りましょう。」
晴れやかな笑みと鋭く光るナイフをシャークに見せつける。くそ、タチの悪りぃお客様なことで、などブツブツ呟きながら契約を成立させる。
「お待たせ致しました、こちらご注文のお飲みもの(え、アルコール度高っっ!)でございます、」
酒瓶をバンっ、と置いて光陰の如くダッシュで厨房にひっこむと店長とイマードに真剣に見つめられた。
店長「あ、シリキちゃん。あの卓担当ね」
イマード「短い間だったけど、お前と働けて楽しかったぜ。ありがとうな」
(………。)
「いやいやいや!縁起でもない!てんちょー!イマードに担当させて下さいっ!!」
店長「あ、ほら呼んでるみたいよ」
「え、無視ですか?って、ぎゃああああああ!」
ヒュンっ、ーーー、
突如飛んで来た細いナイフ。
括り付けられたメモにご丁寧にも綺麗な字で「氷とグラス追加で」なんて書いてある。
(‥‥‥‥。)
(もう、元の世界に帰りたあああい!!、)
半ベソかきながら明日も図書館に篭ろうと誓い、カーティスのいるテーブルにダッシュした
(怖い、恐い、コワイ、!!!)
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