diabolik lovers
愛おしいという感情。



(逆巻シュウ×青山エリア)


散々傷めつけられた肌にしみ込むような音色。そっと目を開けるとバルコニーに映ったのは…



(…シュウ?)



癒すような柔らかい音が部屋に響きわたる。重い瞼をもちあげると、視線の先には満月の光に照らされたシュウがヴァイオリンを奏でていた。以前、弾いてくれと頼んだことがあったが、怠い・面倒くさい・さっさと俺の前から消えてくれ…などお決まりのワードしか返答を得られなかった。そのため、シュウの演奏を耳にするのは初めてのことで。



(…キレイ……)



普通なら上手だとかいう感想を第一に持つんだろうけど、イマイチ音楽に疎い私は上手い下手の採点の基準がわからなかった。そんなことよりも先に思ったのが「キレイ」。耳に優しく入り込む音色も勿論だけど、すっと姿勢を正し、優雅に奏でるシュウの姿や、夜風に靡く髪、月光を反射したヴァイオリン、シュウのうっとりとした視線…全てが完璧だった。きっと一つでも欠けていたらこんなこと思わなかっただろうに…


この瞬間に留まりたい、そう感じてしまう程俗世から隔絶された空間。無意識にでも息を殺してしまう。だって、私が起きていることを知ったらシュウはきっとヴァイオリンを放り投げてしまうから。



(あと少し…あと少しだけこのままでいさせて…)



祈るようにシーツを握りしめた時、



シュウ「アンタ…今日は泣かないんだな」




突然投げかけられた言葉。ばれちゃったのね、とそっと笑いかける



「…うん、今は気分がいいの」


血と身体を嬲られ続けた後、いつもならあまりの痛みと…シュウが私の血と身体にしか興味を示してくれない…虚しさに涙を流してしまう。

でも何だろう、この満たされた気持ちは



(いつもこんなのだったら喜んで血を捧げるのに…)



ゆっくり目を閉じる、刺しこむ痛みを労わるように私を包む心地よい布団の温もり。ふわり、ふわり、朧気になる意識。今日はいいものを見た、だなんて気分良く夢の世界へ入ろうとしたところで突然現実へと引き戻された


「んっ、?!」


身動きすらできない重みが全身にのしかかる、はっと目をさますと私を覆うようにしていたのは…


シュウ「へぇ、随分余裕なんだな。満足そうな顏しやがって…」

「…シュ、ウ」


何か気に障ることでもしたのだろうか。さっきまで機嫌良くヴァイオリンを奏でていたのに…ぐっと体重をかけられ軋む身体。思わず呻き声を漏らしてしまう。シュウに抗議しようと視線を絡ませると、目の前の彼は先程とは違う、ひどく穏やかな笑みを浮かべていた。


シュウ「アンタをめちゃくちゃに犯した後、醜い泣き顏見るのがちょっとした楽しみだったんだが……この顔も悪くない。殺してやりたくなる程うざい顏だけど… な…」

「んっ、っ」


びくりと身体が震える。牙をつきたてられるのだとばかり思っていたのに…降ってきたのは柔らかい口づけで。


シュウ「ああ…たまにはいいな、…んっ……お前の唇も」

「ん、…しゅ、シュウ、」



唇を重ねる度、じわりじわりと心に広がる思い。…愛おしい…。シュウに対してこんな感情を持つなんて…



(シュウ…大好き、)



シュウ「ははっ、…アンタ…優しくしてやっても結局泣くんだな」

「…う、ん…」


素直に頷く。だって反論なんてする気すら起きない程今の私は…



(満たされている…、)



シュウのボタンすらとめていないワイシャツをぎゅっと掴むと、激しくなる口づけを感じるため、私はねだる様にゆっくりと目を閉じた




【愛おしいという感情。】



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