diabolik lovers
優しい人。
優しい人。
(無神ルキ×青山エリア)
っ…いったぁ……
生まれて初めて平手打ちを食わされた。それも親でもなければ恋人でもない全くの他人に。嫉妬に支配された女は悪魔に匹敵する力を持つだろう。
はぁ…冗談じゃない。一体私が何をしたと言うのか。
「とりあえず冷やそう…」
こんな顔誰にも見せられないし、絶対的に見られたくない。誰にも会いませんようにと強く祈りながら私はキッチンへと向かった。
「氷、氷…と、」
ビニール袋に水と氷を入れそっと頬に当てると、ピリッとした痛みとともにひんやりとした心地よさが広がる
「はぁ…もう嫌になるよ…」
「何がだ」
「わああっ!!、」
後ろで声がしたと思ったら、今最も会いたくない人。…ルキが腕を組んで私に厳しい視線を向けていた
「る、ルキ…。何でもないよ」
「何でもない?」
急いで流しにビニール袋の中身を捨てると顔を見られないよう俯き、キッチンを出ようとした
(ルキには…知られたくない)
「おい、」
「本当、大丈夫。なんでもないんだ」
逃げるようにして自室へ戻るとパタンとドアを閉める
(ひっどい顔)
そっと鏡を覗きこむ。苦痛に歪んだ顔と真っ赤な頬。惨めな姿。見るに耐えず湿布でも貼ろうとラックに手を伸ばそうとした時、後ろにいたのは…
「ルキ!ちょ、勝手に部屋に入らな
「黙れ。主人である俺が家畜の小屋に入るのに許可がいるというのか?……ちっ…。そんなことはどうでもいい。何だその醜い頬は。言え。」
「これはその…」
有無を言わせぬ聴聞。絶対的であり拒否なんてできない。
ふぅ、と溜息を零すと私は観念したように先程あったことを話し始めた
「ルキたちと別れてからの帰りみち、知らない女の子がいきなり引っ叩いてきたの。ただそれだけ」
あまりにも情けなくて話したくなかったが、隠すと余計面倒事になりそうだった。何よりルキに隠し事なんて無意味だし。
「…女?……まさかとは思うが」
「何よ、心当たりあるのね。そう、多分その子。」
「……っ…」
私を引っ叩いたのは私と同じ歳くらいの女の子。自称ルキの彼女らしい。
私がルキといるのを見て嫉妬したのかなんか知らないけど、ルキは私のものだ、アンタなんて単に遊ばれてるだけだ、アンタみたいなブスがルキと釣り合うとでも?…などなど
そんな事を一方的に罵られ、一発目と同じ場所に再度平手打ち。
なんなんだ、全く。
私は悪くないのに。
「…あの子相手してた時ルキ荒れてた?……ルキのことだからもっとマシな女相手するかと思ったわ。趣味最悪。」
「……、」
顔を顰め、じっと私を見つめるルキ。何に対して怒ってるのかは分からないけど、怒りたいのはこっちだ。
「もういいでしょ、それともこんな酷い顔がお好み?」
何も言わないルキにちょっとだけイラついた。謝罪なんて期待していないけど何か言って欲しい。
いつもより強い態度になってしまう、怒らせたかな?ともう一度ルキに視線を戻すと……
「…エリア、……」
「る、るるルキっ?!」
まるで壊れものを扱うようにルキは優しく私を全身で包み込んだ。こんな扱いされたのは初めてで、身体が動かない。
「…んっ、……っ」
腫れた頬を慰めるように這わされるルキの舌。
頬を舐めとる度、腫れが引いていく。ヴァンパイアの治癒能力に思わず感嘆を零しそうになるも…
「ちょ、ルキ!!もっ、大丈夫だから……!」
前々から色気半端ない奴だとは思ってたけど、いざこのような扱いを受けると恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだった
「……んっ…エリア、…」
ルキがちゅっ、と頬にキスを落とした時には腫れなど存在していたのかと疑いたくなる程、痛みがすっかり無くなっていた
「ん…ルキ……ありがと、」
「なぜお前が礼を言う」
罪悪感でも感じているつもりなのだろうか。罰の悪そうな顔をしているルキが急に愛おしく感じ、ルキの手に口付けた。ゆっくりと笑みを向けると、そこには…
「治ったのならお前を気遣う必要はもうないな。さて、仕置きの時間だ」
(えええ!もう何時ものルキに戻ってる!!はやっ!!)
先程のしおらしい彼は一体何処へ?
「し、仕置きって何?!私悪くなくない?寧ろ被害者じゃない?」
慌てて抱きしめられた腕から逃げ出すように身をよじると、更にキツく抱き寄せるルキ。
耳元で囁かれたのは。
…お前の身体を傷つけるのも、可愛がるのも主人である俺だけだ…
それに反した罰だ。
甘い吐息とともに囁かれた言葉に全身がゾクりと反応する
ふりかかる牙に身を固めていると、
塞がれたのは唇で。
(ああ。私を傷つけることなんてしないくせに…)
ルキの裏腹な言葉に思わずくすりと笑ってしまった。
本当にルキは…
人間よりも人間らしいヴァンパイアだ。
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