記念ノ噺
天の逢瀬・上
また会える日まで何度でも
また会える日まで何回も
また会える日までいつまでも
―――――天の逢瀬―――――
夏の始まりを告げる月、7月。
今年も、あの時が近づいてくる。
天気予報は、今日も晴れだと告げた。
「あっついなぁ…」
背広なんか着ていられなくて、片手に持って移動する。
てか、世の中クールビズをうたってるってのに、何だってうちの会社は背広なんだ。
ネクタイくらい外させろ…。
「ふぅ…今年こそ、わかんのかねぇ…」
よくわからないが、オレにとって7月7日は何かある日らしい。
今まで何もなかったからわからないが、何故かその日だけ胸の奥がざわつく。
何事もなく過ぎていくだけの七夕の筈なんだが…。
――――――――――――――
今日は七夕。
つまり、何かあるかもしれない日だ。
小さな時から今まで、オレは七夕に晴れた空を拝んだことがない。
転勤族だったこともあり、各地を転々としていたオレは、七夕は雨か曇りの日しかなかった。
そして、今日は運悪く天気予報を聞き逃してしまって、晴れるのか晴れないのかわからない。
まぁでも、今のとこ晴れている。
いつものように仕事して、いつものように帰ろうと思ったけど、その時何故か、無性に空が見たくなって屋上へ行った。
「晴れてる…。」
夜になった今も、雨も降らず、曇りもせず、空は晴れていた。
始めてみる七夕の天の川にびっくりしていた。
ガチャ…
ふいにドアの開く音がして振り返ると、そこには同じビルに入ってる別の会社の有名人がいた。
そいつは、いかにもエリートそうな顔つきで、氷の鬼上司と言われる男だった。
ただ、その容姿は群を秀でていいため、女性からのアプローチが凄まじいとかなんだとか…。
平凡顔の俺からしてみれば羨ましい限りなんだけど。
「…やっと、会えた。」
「へ?」
「やっと、約束が果たせたな、翔也。」
「は?えっと、何でオレの名前…?」
「前に約束したじゃないか。忘れたのか?」
えぇぇぇ…。
そう言われても、ん?
何か引っ掛かるぞ?
「あっ!?え、えぇぇぇえ!?嘘、七夜?」
「忘れやがって…仕方のない奴だな、お前は。」
思い出しましたとも。
えぇ、そりゃもうきっちりとさ。
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