無色ノ噺 私と恋人な御主人様 あれから、私と壱魅様は週末は必ず体を繋げる。 もちろん、他の日だっていれることはないにせよ、している。 「秋江さん、」 「何ですか?」 情事後の和やかな時間、私は胸元に顔を埋める壱魅様の髪を梳きながら、言葉を待った。 「僕とふみちゃんて、異母兄弟なんだね。」 「…何故、それを?」 「…お母さんが、あなたのお父さんは当主様だって、言ったんだ。私も、もう向き合わなくちゃって笑いながら。」 今、貴方はどんな顔をしているんですか? 悲しんでますか? 傷ついていますか? 「僕ね、それ聞いて…」 ―――嬉しかった。 そう言って、顔をあげた壱魅様は幸せそうだった。 「でもね、もっと嬉しかったのが、秋江さんが、僕をその事実で傷つかないよう、苦しまないよう、悲しまないように、ずっと守っててくれたこと。」 「っ!」 「秋江さん、ありがとう。」 気づかれていた。 そして、この方は本当はとても強い人なのだと、新たに知った。 「…これからも守りますよ。ずっと、ずっと…壱魅だけを。」 「うん。でも、どうせなら、辛いことも、悲しいことも、全部全部経験したい。一緒に…」 ―――二人だったら、どんなことも乗り越えられるから。 私はニコリと笑って、そうですね、と返した。 いつまでたっても、壱魅様は壱魅様だけど、いつまでも雛のままではない。 雛はやがて、強くしなやかな鳥になる。 いつの間にか、壱魅様は鳥に成長していた。 羽ばたいて、どこかへ行くことは許せそうにないけど、私と共にいてくれるのならば、全てから守るのではなく、全てを一緒に経験したい。 「一緒に…。」 「うん。」 じんわりと心が暖かい。 幸せを実感する。 壱魅様、貴方が望むなら私は貴方と共にいましょう。 たとえ何があろうと、二人なら乗り越えられる。 だから私は、貴方と世界を生きましょう。 これから先、ずっと…貴方の隣で…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |