幻想ノ噺
6
気を、失ってたらしい。
目が覚めると、シェイが僕を心配そうに覗き込んでいた。
「…しぇ、ゲホっ!ゴホゴホ!」
「無理しないで…。」
声がものの見事に嗄れていた。
シェイが僕の頭を優しく撫でる。
「…良かった。目が、覚めないから、駄目かと思った。」
「きょ、何日?」
「三日目です。」
「!っぎぃ!?」
「駄目ですよ、急に起き上がっちゃ…。」
腰、しかも恥ずかしいところが凄まじい痛みを訴えた。
これは…やばい。
僕はシェイに手伝ってもらいながら上体を起こす。
「はい、お水です。」
ありがとう、と頭を下げて、コップを受け取り水を飲む。
喉が少し潤って、まだ嗄れてはいるけど話せる程度になった。
「ありがとう。」
「はい?」
「僕を、つなぎ止めてくれて。それから、助けてくれて…。」
もしあの時、シェイにしがみついていなかったら、僕は快楽に我を忘れ、流されてしまっていただろう。
そして、今、ここに存在することはなかった。
「…なら、私も礼を言わなくては…。ありがとう、類斗。失わないでくれて、ありがとう。」
失わないで良かった。
本当に良かった。
「それから、」
―――愛してます。
「っ!」
優しく抱きしめられながら、耳元で囁かれた言葉に、カァっと身体が熱くなる。
「返事を、聞かせてはくれませんか?貴方の、類斗の心の声を…」
「っ!…僕、僕は…」
口から出ない答えに、シェイの抱きしめる力が強くなる。
「私に、言って…聞かせて…」
「く、苦しいよ…」
「答えてくれないなら、このままです。」
「!い、意地悪っ!」
「フフ…ほら、聞かせて?」
僕は唇を噛み締め、怖ず怖ずと腕をシェイの背に回し、胸板に頭を擦り付けて、
「僕は、」
―――僕も、好き…。
それ以外の言葉なんて、僕の中にはないんだ。
ただ嬉しそうに、幸せそうにシェイが笑うから、僕も笑った。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!