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幻想ノ噺
ラストフレーズ

僕は今学校にいる。
学校には相変わらず馴染めない。
転校生の巻き起こす嵐は未だ吹き荒れていて、凄まじい被害を与えている。

相変わらず、転校生は僕を引き回し、スケープゴートよろしく扱われている。
でも、僕に手出ししてくる人はいなくなった。
それどころか、同情してくれた人や、助けてもらったという人が守ってくれるようになった。

僕は、こっそり転校生から逃げ出して、保健室の初老の先生の所へ行った。



「いらっしゃい、柏木君。」

「こんにちは、先生。」

「どうしたんかの?」

「…好きな人に、会えなくて。」



そう…。
シェイと過ごした日々は、呆気なく終わった。

なんでも、シェイがいるとこには、生きている人間が長くいていい場所じゃないらしい。
死後の世界、そういえばしっくりくるかな?
だから、僕は最後の晩に沢山、意識を失うほど、愛してもらってから還された。
腰の凄まじい痛みから、夢ではないことはわかった。
だけど、その代わりにとてつもない虚無感に襲われた。
今まで、起きれば隣にいてくれたシェイがいない。
寒くて、寂しくて、泣いてしまった。

あれから、シェイがいるだろう教会にも行った。
なのにいなかった。

還された日から、シェイに会っていない。
寂しくて、寂しくて仕方がない。



「…ほぅ。それは寂しかろう。」

「…はい。」

「まぁ、大丈夫じゃ。金髪の天使は、間もなくこちらへ来るじゃろうて…。」

「はい。…え?」



今、金髪の天使って言った?



「ふふ…。そう驚くことでもないんじゃよ。わしも柏木君と『同じ』じゃから。」

「え、え?」

「わしにも伴侶がおる。ほれ、Sクラスの英語担当教師。」



あぁ、あの優しそうな白髪の先生か…。



「え!じゃあ、先生も僕と同じ…」

「いや、わしは天使側じゃ。」



驚愕の事実に頭がぐるぐるしてきた。



「で、でも…先生は」

「歳をとるのは当たり前じゃ。あやつと共に生き、共に身体を朽ち果て、それからわしと暮らすのじゃから…。」



ずっと共にいたいからの、と幸せそうに微笑む先生。



「じゃから、もうちと待たれい。…しかし、お前さんが金髪の伴侶とは。驚くこともあるものじゃ。」



頭を撫でられ、くすぐったい気持ちになる。

シェイ、シェイ。
早く、会いたいよ。

僕は、足を教会へと向けて行った。
いないとわかっても、あそこに行くことが日課になり、また、そこにいればシェイと触れ合えている気がした。



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あきゅろす。
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