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幻想ノ噺


気を、失ってたらしい。

目が覚めると、シェイが僕を心配そうに覗き込んでいた。



「…しぇ、ゲホっ!ゴホゴホ!」

「無理しないで…。」



声がものの見事に嗄れていた。

シェイが僕の頭を優しく撫でる。



「…良かった。目が、覚めないから、駄目かと思った。」

「きょ、何日?」

「三日目です。」

「!っぎぃ!?」

「駄目ですよ、急に起き上がっちゃ…。」



腰、しかも恥ずかしいところが凄まじい痛みを訴えた。

これは…やばい。

僕はシェイに手伝ってもらいながら上体を起こす。



「はい、お水です。」



ありがとう、と頭を下げて、コップを受け取り水を飲む。
喉が少し潤って、まだ嗄れてはいるけど話せる程度になった。



「ありがとう。」

「はい?」

「僕を、つなぎ止めてくれて。それから、助けてくれて…。」



もしあの時、シェイにしがみついていなかったら、僕は快楽に我を忘れ、流されてしまっていただろう。
そして、今、ここに存在することはなかった。



「…なら、私も礼を言わなくては…。ありがとう、類斗。失わないでくれて、ありがとう。」



失わないで良かった。
本当に良かった。



「それから、」



―――愛してます。



「っ!」



優しく抱きしめられながら、耳元で囁かれた言葉に、カァっと身体が熱くなる。



「返事を、聞かせてはくれませんか?貴方の、類斗の心の声を…」

「っ!…僕、僕は…」



口から出ない答えに、シェイの抱きしめる力が強くなる。



「私に、言って…聞かせて…」

「く、苦しいよ…」

「答えてくれないなら、このままです。」

「!い、意地悪っ!」

「フフ…ほら、聞かせて?」



僕は唇を噛み締め、怖ず怖ずと腕をシェイの背に回し、胸板に頭を擦り付けて、



「僕は、」



―――僕も、好き…。



それ以外の言葉なんて、僕の中にはないんだ。

ただ嬉しそうに、幸せそうにシェイが笑うから、僕も笑った。



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あきゅろす。
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