[携帯モード] [URL送信]

幻想ノ噺


悲しい。
なんて、悲しい…。

たとえ悪魔だとしても、元々は愛したかった、愛されたかっただけなんだろう。
その伴侶となる人と…。



「しかし、あんな風になったのはあれの責任。それより、今は貴方です。」

「え?」



急に自分の方に話がきて、キョトンとしてしまう。



「人間といえども、貴方は私の伴侶。しかし、その身は悪魔によって蝕まれている。」

「蝕まれて、る?どういう…?」

「つまり、こういうことです。」

「ひゃっ!って…なに、これ」



シェイにより露になった僕の身体には、真っ黒な蔦が入れ墨のように、下半身を中心に伸びていた。
しかも、その蔦はじりじりとまだ伸びている。



「悪魔は性交の時、気に入った人間の魂を縛り付けるための種を植え付けるんです。そして、更に悪魔の精をかけることにより、発芽を促進し…」

「んう、」

「蔦が伸び、束縛する。」



シェイが触れた所の蔦は、すうっと消えた。
消えたけど、その時に僅かではあるが快感を伴っていた。



「…束縛されたら、後は悪魔の奴隷と同じ。私は貴方を渡したくない。けれど、それには…」

「な、に?」

「……私と、性交してもらわなければなりません。」

「………。」

「それに伴う快感は、自我を失わせるほどとも…。け、けれど貴方を失いたくない!もし、そうなっても私は貴方の側に」

「いい。」

「はい?」



言葉を遮った僕は、カタカタと身体が震えるのも無視して、シェイに抱き着いた。



「いいです。自我がなくなっても…。」



シェイが息を飲んだ。
僕は恥ずかしくてしょうがなかったけれど、シェイが手放したくないと言うなら、側にいたいと思った。
どんな形でも、僕を望むなら幸せになれなかった、あの『片割れ』の分まで…。



「…本当に、いいんですか?」

「………はい。」

「わかりました。」

「でも、絶対になくなりません。僕は…僕も」



―――シェイの側にいたいから。



「だから、なくなりません!」

「………うん。」



シェイの腕が優しく僕を包む。



「うん。類斗…」



力が篭められ、少し息苦しくなった。



[*前へ][次へ#]

8/15ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!