[携帯モード] [URL送信]

幻想ノ噺


転校生が、やって来た。

真っ黒、闇、…悪魔。
何故か僕の頭の中で警報が鳴り響いていた。
容姿は、艶やかな首の付け根まで伸ばした黒髪、ひどく鋭い美貌、かなりの高身長。
申し分ない美形だった。



「蓮見玲一郎っていうんだ。よろしく。」

「あ、僕は柏木類斗。よろしくね。」



隣の席になった蓮見君は、ニィッと笑う。
ぞっとした。
まるで、獲物でも見つけたかのようだった。

そして、それは正しかった。

学校は元の状態に戻ってしまった。
けれど、見下されるのは僕だけだった。

平凡、平凡、と名前を呼ばれなくなり、少し僕を調べた人たちからは、孤児、孤児、と言われた。
弱っていた僕は、いつも側にいた蓮見君にこぼした。



「…苦しいよ。」

「……なら、忘れてしまえばいい。」

「え?」

「苦しいなら、そいつらの言葉が聞こえなくなるくらい…」



―――俺だけを見ればいい。



その言葉と同時に、蓮見君はニィッと笑って僕を押し倒してきた。
あの時と…転校初日と同じ顔をして。

叫ぼうとした声は奪われ、身体を弄ばれ、…犯された。

泣こうが、喚こうが、助けはなかった。

そんな行為を何度もされた後、蓮見君はまた転校していった。

そして、また転校生が来た。
彼は学校を目茶苦茶にしていった。

彼に惚れた生徒会たちの独裁。
彼に惚れた風紀委員会の職権濫用。
親衛隊の暴走。
そして、既に学校に馴染むことを諦めた僕は、転校生によってスケープゴートにされた。

毎日、振るわれる生徒会や、風紀などの暴力。
親衛隊の八つ当たり。
独裁でフラストレーションが溜まっていた一般生徒のはけ口。

僕はすぐにボロボロになった。

苦しくて、苦しくて、声も上げずに泣いた。

保健室の先生は、毎日来る怪我人の治療で忙しく、頼れなかった。
逃げる場所もなく、僕は全てを受けつづけ、気づけば屋上のフェンスに足をかけていた。

そして、飛び降りた。

浮遊感は一瞬で、あとはただただ重力のまま地面に引き付けられる。
けれど、奇跡が起こった。

天使が、僕を助けてくれたのだ。
まばゆい金髪は長くウェーブしており、優しい顔は美しく、広げた翼は神々しいまでに白く気高かった。



“よく、頑張りましたね…。”



僕は泣きそうになった。
甘く優しい声は、僕をゆっくりと抱く。
暖かい腕の中、僕はその胸板に顔を埋めて、泣いて、泣いて、泣き疲れて、そのまま眠ってしまった。

そして、次に目覚めた時、僕はカノンを聴いた。

天使に翼はなかった。
容姿は相変わらずだけれど、白のワイシャツに黒いズボンという姿だった。

これが、天使との出会いだった。



[*前へ][次へ#]

2/15ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!