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幻想ノ噺
カルテット



「わかりました。しかし…なんとも痛ましい。」

「いえ…少し痛む程度ですから。」

「……とにかく、ブレスレットを取りに返したいんですね?」

「はい。」

「いいでしょう。対価は…歌。」

「えっ!」

「歌ってください。それが一番いいです。」



ニコリと微笑まれ、それならばと、翠藍は心を込めて歌った。
美しく儚い澄んだ歌声。
まるで玻璃の歌声だった。

次第に翠藍の周りは明るくなり、翠藍自身はゆっくりと瞼が下がってきた。
最後まで歌いきったとき、翠藍の意識も途切れた。



―――――――――



ザァァン…―ザァァン…―



「う…ん……」



眩しさに目を開けると、青い空が広がっていた。
下半身に違和感を感じて体を起こすと…



「ヒトの…足。」



尾びれは、すっとした足になっていた。
動かそうとするも、全く動かない。
どうしたものか、と悩んでいたら背後から抱きしめられた。



「!」

「久しぶり、人魚さん。そしてようこそ…陸の国へ。」

「か、返して、僕のブレスレット。」

「うん。ほら…」



目の前にかざされたブレスレットをとろうとした。
しかし…



ブチンッ!



王子はブレスレットを左右に引っ張りただのガラス玉にしてしまった。



「クク…もう帰さないよ。」

「あ、あぁ…そんな……」



翠藍は目の前が真っ暗になっていく気がした。

王子は翠藍の首に口づけると、きつく吸って跡を残した。
それから、泣いている翠藍を横抱きにして宮殿へと帰っていった。



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あきゅろす。
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