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狂気ノ噺


ヒロは、はっとすると怯えた目で俺の傷を見る。



「あ、あぁ…」



ヒロは弱い。
極度に弱い。
何がその身に起こったのか、末端しか知らないけれど、きっと本来なら明るく、俺たちの世界にいるべき人間なんかじゃない。
それをこんなにまで歪ませ、壊した奴が憎い。

ハハ…。
俺にもこんな感情あったんだ。

憎いけど、既に殺した奴ら以外に誰がいるかなんて分からない。
ヒロから聞き出したいとも思わない。
きっと、それにヒロは堪えられないから。



「ど、しよ…どうしたらいい?」

「ヒロ…。」

「お願い!なんでもするから、捨て…な、で…」



涙を浮かべた目で、上目使いって反則でしょ。

あぁ…理性なんかクソくらえ。
もう我慢も待ちもできない。



「ねぇ、み…さき…」



その白い首に今すぐ、跡を残したい。
刃でつくる赤ではなく、キスでつくる赤い花びらを散らしたい。

ねぇ、ヒロは許してくれるかな?
今からすることを、許してくれる?
まぁ、許さなくてもいいかな。
俺が欲しいのは「許し」なんかじゃなくて、ヒロだから。



「岬?」

「ヒロ、ヒロは償いたいの?なら…」



最低なんて百も承知。
思いが歪んでるのは、この家じゃ常識。



「ヒロを、ちょうだい。」



怯えた色が、不安の色へと変わった。



「大丈夫。優しく、どろどろに溶かしてあげる。」



俺以外、忘れてしまうほどに、ね。



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あきゅろす。
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