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復活×脱色 転生4

7月中旬、イタリアの某所にあるチャペルで、盛大な結婚式が挙げられていた。

「おめでとう」

「幸せになりなね」

誓いを終え、チャペルの前にたたずむ花嫁と花婿に心からの祝福の言葉がかけられる。その沢山の言葉に花嫁はとても嬉しそうに、そしてどこか照れ臭そうに笑っている。

「綺麗だよ、花!」

橙のドレスに身を包む長い茶髪の淑女が花嫁に腕を降り、声をかける。花嫁は彼女の名にふさわしく、花が咲くように笑みを浮かべた。

花嫁はくるりと後ろを向くと、淡い青色のブーケをしっかりと持ち直す。

「ちゃんと受け取ってね!」

そう叫ぶと、花嫁はブーケを思いっきり降り投げた。ブーケは空高く舞い上がると、くるくると回りながら長い黒髪に青いドレスの淑女の元へ吸い込まれるように落ちていく。彼女がそれを受け取ると、周りで弾けるように歓声が上がった。そんな周りの様子に少し驚いた顔をしながらブーケを見つめる。

「良かったね、クロームちゃん」

女性の周りに彼女の友達が集まる。

「知ってますか?花嫁のブーケを最初にキャッチした人は次にハッピーになれるんですよ!」

水色のドレスに身を包む黒髪の淑女は、クロームと呼ばれた少女にそう言って笑いかける。少女はブーケを少し持ち上げると、それを眺めながら笑みを浮かべた。


「まさか芝生頭が真っ先に結婚するなんてな」

チャペルの前の階段を降りてくる花嫁と花婿を見ながら、銀髪の男が溢すように呟く。その言葉に、隣に立っていた黒髪の青年が屈託のない笑みを浮かべた。

「実は隠れて5年も付き合ってたらしーぜ?先輩も隅に置けないよな」

新たに知ったその情報に、銀髪の青年は「マジかよ」と少し驚いた顔をする。

「獄寺はモテるのに恋人の気配は全くねーのな」

「うるせーよ」

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる銀髪の青年に、黒髪の青年は声に出して笑った。


チャペルに集まる皆が、花嫁と花婿を囲んで心から笑い合っている。

ありふれながらも、変えがたい幸せがそこにはあった。


「平和だな」

金髪に白いスーツの紳士―――ディーノが呟く。その隣で、深紅のドレスに身を包む女性―――ビアンキが微笑んだ。

「そうね。とても、平和だわ」

しかしビアンキは少しだけ目を伏せると、小さく言葉を続けた。

「でも―――『あの子』もいたら、どんなに良かったかしらね」

その言葉にディーノは悲しげに微笑むと、空を仰ぎ見た。空はどこまでも青く高く、そして広い。その中を六羽の白い鳩が気持ち良さそうに飛んでいく。

「あれからもう4年も経つんだな」


4年前の乾いた夏の日。

争いを最も嫌い、平和を最も望んだ彼らの大空は、抗争中に巻き込まれた民間人を庇い、そして死んでしまった。

今でもはっきりと蘇るあの銃声。

彼の胸に広がる赤に、その場にいた誰もが世界が崩れるほどの絶望を覚えた。


「時間はかかったけど、みんな立ち直ってくれて良かったよ」

大空が消え去った直後は、自分達のボスを守れなかったと多くの仲間が深く嘆き、悔やみ、悲しんだ。己の非力さに涙した。

ディーノは息を吐くと空から目を反らす。

彼もまた、可愛い弟分を亡くし酷く気落ちした一人だった。

それでも彼らが立ち直れたのは『いつまでも自分達が落ち込んでいるのを、彼が望むはずがない』と気付けたからだった。

平和を望み、そのために薄暗い裏の世界に入った彼だからこそ、自身の死が仲間の『不幸』の元凶となるなんて許せるはずがないと気付けたから。

だからこそ、時間をかけ、ボスの死を乗り越え、彼らは彼らの幸せを築いた。


「ねぇツナ、見てる?貴方の仲間達は今、とても幸せそうに笑ってるわよ」

ビアンキの言葉に応えるかのように、チャペルの鐘が美しくも荘厳な音色を奏でる。

幸せを呼ぶと言うその音に、誰もが談笑を止めてチャペルを振り返った。

優しい静寂の中、鐘の音は空高く響き渡っていった。



黒崎家では、夕食のため皆がテーブルに集まる。ふと、椅子に着こうとしていたツナは動きを止めて後ろを振り返る。

(今……)

遊子を手伝って夕食をテーブルに運んでいた夏梨は、不安定な体勢のまま遠くを見るツナに不思議そうに首をかしげる。

「どうしたのツナ兄?」

夏梨の声に我に返ったツナは「なんでもないよ」と笑って席についた。

(何か今、鐘の音が聞こえたような気がしたんだけど……)

この辺りに鐘のある建物はないし、気のせいだろうと思い直す。

「おまたせ〜!さ、食べよう」

サラダボールを持ってきた遊子を最後に家族五人が席につくと、みんなそれぞれ手を合わせた。

「「「いただきます」」」

声を揃えて合唱すると、それぞれが夕食に手を伸ばす。今日あったことや明日の事などを話す遊子に、ツナは一心と共に相づちを返す。時折一心のバカな言動に夏梨と一護が容赦ないツッコミを入れ、ツナと遊子はそれに笑う。

そこに広がるソレもまた、かけがえのない『平和』の姿だった。



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