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復活×脱色 転生3
ツナは新しい生を歩むに当たって、前世には無かったものを与えられた。
それは―――霊を視る力。
ツナは現世において、物心ついたときから『生を終えたモノ』を視ることができた。
「あ、ツナ君!」
一日の授業を終えた放課後、特にやることもなく歩いていると、不意に後ろから声がかけられた。ツナが足を止めて振り返ると、そこには野球帽を被りサッカーボールを抱える兄の同級生―――井上織姫の姿があった。
「あ、こんにちは織姫さん」
ツナはペコリとお辞儀する。織姫もツナに「こんにちは〜」と返しながら小走りで駆け寄ってきた。
「こんなところで奇遇だね!今学校帰り?」
「はい。織姫さんは?」
織姫の問いに頷いて聞き返すと、織姫は持っていたサッカーボールをツナの前に出した。
「私はねぇ、たつきちゃんと野ッカーやってるの!」
『野ッカー』という聞きなれない単語にツナは首をかしげる。すると織姫の後ろから誰かが駆け寄ってきた。
「サッカーボール見つかったー?」
かけられた声にツナと織姫が同時に振り返る。すると兄の幼馴染みである有沢たつきが、金属バッドを片手に走ってくるのが見えた。
「ボールあったよ〜」
織姫がボールを掲げながらたつきに手を振る。たつきは織姫の後ろの人影に気付き、声をあげた。
「あれ、ツナ?」
久しぶりじゃん、と笑うたつきにツナは挨拶する。
「こんにちは、たつきちゃん」
たつきは織姫からボールを受け取りつつ「こんにちは」と返した。
「そういやツナ……アンタの兄貴変なもんでも食ってるの?」
唐突に何かを思い出したように尋ねるたつきに、ツナは首をかしげる。
「いやさ、最近トイレやら保健室やらで授業抜けること多いからさ」
自分の知らなかった兄の高校での状態に、ツナは少し驚く。ツナは最近の一護の様子を思い返す。
「うーん……変なものって言っても俺と同じ遊子の手料理だし……あ〜、あえて言うなら最近一兄夜食が増えた、かな?」
お盆にツナの一食分に当たる量の料理をのせて階段を上がる兄の姿をここ最近何度か見た。ただでさえ夕飯でツナの倍は食べているのにまだ食べるのかと、その時のツナは成長期の食欲の果てのなさに驚いていた。
「でも朝とか別に気分悪そうじゃなかったし……って言うか、一兄うちでは別に普通なんだけど」
仮にも医者の息子だ。一護が具合悪そうにしていたらすぐに気づく。例え自分が気付かなくても、遊子や夏梨、それに一心が気付いたはずだ。
黒崎家のそういう所をよく知っているたつきは「なんだ」とどこか残念そうな声を上げた。
「じゃあやっぱりアレは仮病か。まぁ元気に走って保健室行くからそうじゃないかとは思ってたんだけどさ」
夏バテや夏風邪だったらからかってやろうと思ってたのに。
そう言いながらたつきはツナの頭をぐしゃりとかき回した。
「引き留めて悪かったね。暗くならないうちに帰りなよ」
そう言うとたつきは織姫からボールを受け取って、空き地の方へ歩いて行った。
「じゃあねツナ君」
ツナに手を降って、織姫もたつきに続いた。
ツナも二人に別れを告げ、帰路へと戻る。しかしその頭の中では、先ほど聞いた兄の『仮病』について考えていた。
(一兄……サボりとかで仮病使うタイプじゃないんだけどなぁ)
しかし、五分後にはツナは思考どころではなくなっていた。
朝のとは違う『悪霊』の雄叫びが聞こえてきたのだ。
それからツナは、なるべく普通を装い、悪霊に近付かないよう気付かれないよう全神経を集中させながら、全身全霊で自宅を目指した。
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