大空と錬金術師 決意 「あ、おかえりツナ」 ツナが資料室に戻ると、アルが資料から顔を上げる。 「どこ行ってたの?」 そう尋ねるアルに、「マスタングさんに用があって」とだけ言う。 アルは納得したようなしていないような曖昧な様子だったが、それ以上追求しなかった。そんなアルにツナは気まずそうにうつむく。 「……ごめんね」 唐突に謝られたツナはびっくりして顔を上げた。 「え?」 思わずアルに聞き返す。 「なんか、ツナを無理矢理連れ回すみたいになっちゃって……」 エドから何も聞いていないアルは、ツナが異世界から来たことを知らない。だからこそ、ツナの旅を邪魔しているようで申し訳なく感じていた。 しかしツナは直ぐ様首を振った。 「そんなことないよ!」 二人のお陰でこの世界の『錬金術』というものや、軍の制度を知ることができた。 二人のお陰で軍の人と知り合えた。その人に、情報を掴んだら教えてくれると言ってもらえた。 二人がいなかったら自分は寝床すら確保できなかったし、そもそもここが異世界だと気付けなかっただろう。 ツナのそんな想いが胸の辺りでぐるぐると巡るが、すぐには言葉にできなかった。 ゆっくり、ゆっくりと言葉を心で整理する。 「迷惑なんかじゃない。二人のお陰でこの国の色んな事が知れたんだから」 ツナはまっすぐにアルを見てそう言った。 超死ぬ気モードとは違う、だがしっかりと相手を見据える強い目。 アルはそれを見て、安心したように胸を撫で下ろした。 「良かった、迷惑じゃなくて」 「迷惑だなんてとんでもないよ」 そう言って二人は笑い合う。 「一つ、聞きたいんだ」 ひとしきり笑った後にツナは切り出す。 「どうして俺に人体錬成の事を教えてくれたの?」 少しだけ、気になっていた。会ってからまだ一日二日の……しかも怪しい力を持った自分。普通なら、あんな重大なことを教えないだろう。 事実、昨日までアルの鎧の事は誤魔化していた。 「ううーん……」 ツナの質問にアルは腕を組んで考える素振りをした。 「……何て言うか……会ったばかりのタッカーさんに教えるのに、ツナに教えないのが嫌だったんだ」 そう言って笑うと、アルは資料を探しに戻っていった。 一人になったツナは近くにあった椅子に腰を下ろし、アルに言われた言葉を反芻した。 それと共にこの二日間の出来事が脳裏に浮かんでは消える。 (……二人にはこの短い間に凄くお世話になってる……) ぼんやり天井を見上げながらそう思う。 (……しかも、秘密を作ってる俺に……あんな辛い過去まで俺の教えてくれた……) なのに自分は黙ったまんま……その事実にツナは何度目かの罪悪感に苛まれる。 「……二人は俺を信用して話してくれたんだ……だったら……俺だって応えるべきだよな、ナッツ……」 「GAO」 胸元のリングが小さく揺れた。 . [*BACK][NEXT#] [戻る] |