大空と錬金術師
大空と焔
「あの、マスタングさん!」
これから帰ろうと玄関まで来ていたマスタングは、突然の呼び声に振り返る。
ツナが走ってくるのが見えた。
「どうしたんだね?」
マスタングが尋ねると、ツナは息を整えながらマスタングを見上げる。
「聞きたいことがあるんです」
マスタングは片眉を上げる。
「言ってみなさい」
許可を得たツナは、探し人がいると言った。
「探し人……?」
マスタングは軍人であり、しかも大佐だ。きっと憲兵などに顔も効くだろう。そう判断したツナは、思い切って獄寺と山本の事を聞くことにした。
「一人は外側に跳ねた銀髪で目付きが少しきつめの少年で、もう一人は短い黒髪でよく笑う少年です。二人とも同い年で、俺の仲間なんですけど……色々あってはぐれちゃいまして……」
そんなツナの言葉に、マスタングは首をかしげる。
「君はエルリック兄弟の連れではないのか?」
マスタングの質問に、ツナは少し唸った。
確かに、今現在は宿を世話になっているため行動を共にしている。しかし、その実は昨日出会ったばかりというなんとも曖昧な関係なのだ。一緒に旅をすると約束した訳でもない、脆い関係。それを連れと呼んで良いのかと聞かれれば、肯定することはできなかった。
黙り込んでしまったツナを、マスタングは顎に手をやって観察した。
(そう言えば鋼のの話の時、この少年は泣いていたのだったな……)
腫れた目に気がついたマスタングは、先程の声もなく泣いていたツナを思い出す。
(……鋼のは今日初めて旅の目的を少年に明かしたのか……ということはまだ出会って間もないのだろうな……)
東洋系の顔立ちに、少し浮いた服装。所々怪しい少年ではあるが、エドの話で泣いているあの姿は、純粋そのものだった。
(……鋼のが信用して側に置いているのだ。信用しても大丈夫だろう)
そう思ったマスタングは、ゆっくり口を開いた。
「君の言うような少年逹が保護されていないか、憲兵に聞いておこう」
唐突に降りかかった言葉に、ツナは顔を上げる。
「ありがとうございます!!」
そのまま勢いよくお辞儀する。
マスタングは笑って別れを告げると玄関から出ていった。
ツナはその間もずっと頭を下げていた。
(少しだけ。少しだけだけど、前に進めた……かも)
ツナは顔を上げ、玄関扉を見つめる。
(待ってて、獄寺君、山本。絶対見付けるから)
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