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雪、溶ける。
疑問、来る。



「ディーノさんっ!!!!!」
「うぅお!!?─────なぁんだツナじゃねぇか。どうしたんだ?」


プシュッ、と小さく音を立てて開いた病院の自動ドアから転がり込む様にして入り、突如として大声で自分の名前を呼び上げた弟弟子に少なからず驚愕するイタリアから来た跳ね馬男。
ツナはディーノにぶつかる寸前で踵を使った急ブレーキを使用し、膝に手をつけて荒い息を繰り返した。相当走ったのだろう。

そんなツナの様子を半ば呆れ、半ば「相変わらずだなー。」とでも言いたそうな眼差しで見ていたディーノは、次の瞬間ツナの後ろに立っていた少女を目撃する事によって驚愕する事となった。
銀にモスグリーンを織り交ぜた様な不思議な髪に、翡翠の様に輝く瞳。
ボンゴレ門外顧問とともに日本へ来たとき以来の再会だ。


「どうしてお前がツナと一緒に来たんだ?雪ひm───────」
『ディーノさんしーっ、しーーっ!!!』


雪菜の名を呼ぼうとしたのかなんなのか、ディーノが言いかけた言葉を途中で制する雪菜。物凄く慌てていた。
ツナはその様子を、怪訝そうに見ている。




セツ、何でこんなに慌ててるの?




これが彼の、素直な疑問だ。
が、それは心の中に留められてあり雪菜に届きそうにない。
「ゆきひ」、なんだ?

すると跳ね馬はハッと何かに気付いた様に一瞬目を見開き、そして「いやぁ、わりぃわりぃ。」と言いながら自らの髪をかきあげた。
そして、白い歯をあらわにしながらニカッと笑う。


「秘密にしてたの忘れちまったんだ。わりぃな、『雪姫』!」
『ぁっ〜〜〜〜〜…!!!』
「ん?……………あ」
「雪姫……?」


頑張って謝ろうとしたディーノだがそれは逆に逆効果。いとも簡単に口を滑らせるのは、今隣にロマーリオがいないからだろうか。
自分が何をしたのか、ワンビート遅れて気付くディーノに、なんのこっちゃ、と脳内スクランブル交差点の人口量をさらに増やすツナ。←なんのこっちゃ。 

サァアア、と一気に顔が青ざめる雪菜。
ツナが驚いて「大丈夫!?」と声をかけているが、それすらも聞こえていなさそうだ。


『ディーノさ、雪、あぁぁ………』
「わ、わりぃ!!」


パンッ、と顔の真ん前で合掌するディーノ。
その表情は本当に申し分けなさそうだ。…───────……最も、もう遅いのだが。

ツナはと言うと、兎にも角にも呆然としていた。




え?雪姫って、え?何どう言う事?ちょっとディーノさん、俺の妹の名前「雪姫」じゃなくて「雪菜」ですよ?間違えたんですか?だとしても外れ過ぎじゃないかな……?




雪菜はと言うと、今も呆然と立ち尽くしている。
ディーノは未だ申し訳なさそうに、雪菜とツナの様子を交互に見ていた。


「な、なぁ雪ひ…────────……ゴホン、せ、雪菜…?だ、大丈夫か…?」
『……はぃ…』
「…ほ、本当かよ…?」
『…はぃ……』
「……う、嘘じゃねぇよな…」
『………はぃ』
「いや嘘だろ、嘘ついてるんだろ!?」
『……………はぃ』
「そこは否定してくれよ!!」


ディーノと雪菜の間で繰り広げられる(最も、ほとんどディーノが話しかけて雪菜が一言返事をしているだけだが)会話。ツナは完全に蚊帳の外だった。
未だ『雪姫』と『雪菜』の関係性が見えて来なかったのだ。


『…────────……どうしよう…』
「え…?」


耳に届いた、小さく消え入りそうな少女の声に、ツナは疑問符を浮かべた。
その声は、確かに雪菜の方から聞こえて来た物だった。


『バレちゃった…兄さんに………どうしよう……』
「バレる…?……雪菜…?」





バレるって何が…?




相変わらず浮かぶ疑問。
一体なんなのだろう。

ツナは、自分だけ状況が理解出来ていない事にむず痒さを感じた。
何故、自分だけ分かっていない?
何故、自分にバレてはいけない?
何故、妹は何も教えてくれない…─────────……?

そして次の瞬間、ツナは再び自分の不甲斐なさを思い知らされる事となった。


『ぅっ……』
「ぅお!!?な、泣くな雪菜…!?」


雪菜が涙を流し始め、ディーノがそれをなだめている。




何で、また泣かせちゃったんだろう……?自分は何をしているんだろう…?どうしてまた、誰かが俺の前で泣いてるんだろう………?




先ほどから一向に絶えない疑問。自分に向けての、虐げの質問。自分の行為への、後悔の質問。妹の行為への、不満の質問。

全ての疑問が頭を巡り巡った。
だけど、目の前で泣いている妹に、自分は何もしてあげる事は出来ない。
なぜなら、自分は状況が理解出来ていないからだ。

妹は何故泣いている?
妹がバレてしまったと言っているのは何の事?
妹をディーノが『雪姫』と呼び間違えたのはどう言う了見で?

兎に角分からない、何もかもが分からない。

頭のパンクで自分までもが泣き出しそうになった、その時。


「俺が説明するぞ」
「!!?リボーン!?」


ヴィーン、という軽い音を立て、病院の自動ドアが開いた。
それと同時に聞こえて来た家庭教師の声に、ツナだけでなくディーノまでもが驚きで目を見開いた。


「せ、説明って、何を…!?」
「…いいな?雪菜」
『……はい』


ツナの質問をガン無視し、雪菜へと視線を向けるリボーン。
そして、ディーノの質問攻めに向かって返答していたときより、格段にハッキリと返事を返す雪菜。
ツナは、なんだかこれから話される事が、とても大切な、絶対に忘れてはいけない話な気がした。


「雪菜はな…────────────………






















       ……─────────────…裏社会中で名の知れた、殺し屋(ヒットマン)なんだぞ」







(どうしよう……嫌われたくない…バレちゃった………どうしよう……)
(ヒットマン………?)
(すまねぇな、雪菜、言わせてもらうぞ……)


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あきゅろす。
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