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雪、溶ける。
リング、来る!



「それにしてもツナ。お前、何時あんなに可愛い彼女さんが出来たんだ?」
「へッ!?か、彼女!!?」


ニヤニヤしながら、俺を肘でつついてくる父さん。地味に痛いから止めてほしい。
すると、セツまで同じ事を言い出した。


『そうだよ兄さん!えっと確か………京子さんに、ハルさん!』
「えぇッ、京子ちゃんにハルぅ!!?」


いやいや、あの二人はただの知り合い、とても彼女などと言う関係ではない。とくにハルは。
というか父さん、セツに何教えてるのさ。

そんな事を考えていると、いつの間にか「ツナも隅に置けねぇなぁ!!」と父さんに思い切り背中をぶっ叩かれていた。
いきなりの事だったのもあって、俺は思い切り前によろけてしまった。

次の瞬間俺の脳が認識したのは首の近くにあったきらきらと輝く銀色の物。よろけた拍子に服の中からのぞいたのだろう。
位置から見てネックレス?でも、俺はネックレスなんて付けない。
てことは、これって………?

そう思ってちょっと手に取って確認してみる。
リングだ、チェーンに通してあるだけで。
銀色で模様が入った輪の部分に、大きな空色の水晶。その奥に、紋章の様な物が見える。
え、これって確か……………


「ん゛な゛あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??このリングって、あ、あの恐ろしい…!!?」
「お、それってペンダントだろ?彼女が出来るとそう言う事にも興味が出てくるんだなぁ!」
『………』


いや違うよ。
まず彼女なんて出来てないし出来たとしてもこんな曰く付けなリングは欲しくない、と言うか俺に彼女なんて出来る筈かない!!
自分で言ってて悲しいが、これが現実だ、諦めよう。

俺はこのリングを首にかけた覚えなんてない、そして昨日のよる寝る時、確実にネックレスなんて付けていなかった。
こんな事をしそうな人物は一人しか思いつかない。


「リボーン…!!」
『へっ、兄さんちょっと待って!!?』


小さくカテキョーの名を呟きながら風速で階段を駆け上がる。
セツの驚いた声が聞こえたけどちょっと待っていてくれ、こっちの用事を済ませてからだ。




バンッッッ




「リボォオオン!!!!!」
「ん?なんだ」


居ましたよ、えぇ居ましたとも。世界最強のヒットマンさんが。俺の部屋で。革張りのとーってもお高そうなソファーで。
エスプレッソを飲んでいた。



・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・




『……兄さんにはお父さんの事、言わないの?』
「んー?」


ツナが飛び出して行ったダイニングの縁側に取り残された二人。
突如として飛び出した雪菜の真剣そうな問いに、家光は間の抜けた声で返事をした。
そしてすぐ質問の意味を理解したのか、下げていた目尻を『勤務中』と同じ様にキリッと持ち上げる。


「………まぁ、気が向いたらな」
『……そっか…』


一気に肩の力を抜く雪菜。
これは、兄がいつかは知らなければいけない、受け止めなければいけない事実。
本当に自分の父は、気まぐれなどでこの様な重要な情報を兄に打ち明けるつもりなのだろうか。

疑問も残る。
が、しかし。
突然二階から聞こえた、


「リボォオオン!!!!!」


と言う兄の物であろう物凄い剣幕のこもった声を無視する事は出来ず。
雪菜は慌ててダイニングと廊下を繋ぐ出入り口へと足を運んだ。
そして、次の瞬間何かを思い出したかの様にピタリと歩くのをやめ、家光の方へと振り返る。


『気をつけてね、お父さん。また後で!』
「!!……あぁ」


両者微笑み合う親と子。
家光の笑顔を確認し、雪菜は今一度兄のいる二階へ向かう為に踵を返した。



・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・




「お前だな!?このリングを首にかけたのは!!」
「…俺じゃねぇぞ」
「嘘付け!!お前以外に誰がいるんだよ!」


そう言って、首に掛かったリングをチェーンごとリボーンの方へ持ち出した。
デザインといい形といい、全てが全て、昨日見た七つのリングの中の一つと瓜二つだった。というか昨日見たリングそのものだろう。


「……あいつから、何も聞いてねぇのか?」
「あいつって…?と、とにかく!俺はマフィアなんて関係ないから!!」


そう叫んで、俺はリングを首から外すべく、どこにあるのか分からないチェーンの開け口を探り始めた。
リボーンが切り出した『あいつ』が誰なのかも気になるけど、今はこの物騒なリングをとにかく早く手放さなくては。

考えながら探している所為か、中々チェーンのつなぎ目にたどり着かない。
そして、ついにそれも見つからないまま、リボーンが再び口を開いた。


「何言ってんだ、関係大有りだぞ」
「は?」
「リングは、正統後継者の証だからな」





はい……?




ワッツ?
ワンモアプリーズ?
え?正統後継者って…………。
あははは、リボーンさんそんな冗談御キツい………。


「冗談なんかじゃねぇぞ。そのリングをボンゴレ独立暗殺部隊、ヴァリアーも狙ってる以上、戦いは避けて通れねぇぞ」
「そんなあぁぁ!!?」


頭を抱えて完全に精神が昇天する。
え?戦いって…!!
骸との一戦で戦いなんてもうこりごりなのに…!!!
また戦わないといけないの…!!?

絶望的なバッドニュースにもう楽になってしまいたいぐらいだ。
もう嫌だ。何が独立暗殺部隊だ。
昨日のロン毛で十分すぎたよ有り難う。
もういらないよ、これ以上は俺が心身共々謝絶するよ…!!!


「デ、ディーノさんに返してくる…!!」




ガチャッ




『私も行くよ、兄さん!』
「あ、うん!」


リングを持って部屋のドアへ向き戻ると、丁度セツがそのドアを開けて入って来た。
俺は適当に返事をしてセツと一緒に家を飛び出した。
向かうはバジルくんが運ばれた、中山外科病院。


この時俺はリングの事で頭がいっぱいで、なんでセツがこの事を知っているのか、考えている余裕がなかった。







(は、早く返さなきゃ…!!)
(大空のリング……私に来たのは、雪……────)
(ツナ……頑張れよ……)
(本当は、まだ早いんだがな……)


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あきゅろす。
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