雪、溶ける。 大騒動、来る! えー、画面の前にいる皆。 今、補修に向かっていた筈の俺たちがどこにいるかと言うと………。 「バカは呼ぶなっつったんだよ、バカは……」 「はひ!獄寺さん、バカって誰ですか!?」 いやハル、それじゃあ自分がバカだって肯定しちゃってるよ…… そんなツッコミを心の中に留め、呆れながらも自分の後ろにいる大所帯の中の一人に目を向ける。 並中のマドンナ的存在で、ボクシング部主将のおにいさんこと笹川了平先輩の妹でもある、笹川京子ちゃんに。 ハルと獄寺くんの言い合いを微笑んで見ている京子ちゃんの笑顔は、まるで向日葵のようだ。 はぁあ、癒される…………。 ……………いや待て、そう言う話じゃなかった筈だ。 さっきまで俺たち(獄寺君、山本、そして俺)は補修をする為に学校に向かっていた。 最初は山本と獄寺君の言い合いを聞きながら進んでいた物の、いつの間にか話題は『俺の父さん』へと変換されていた。 俺が暗い顔で、「あんな父親……今更帰って来られたって…………」と、そう言うと、二人は顔を見合わせた。 そして、山本は、 「……なぁ、補修さぼって遊び行かね?」 と切り出した。 俺は突然の事に驚いて、「え?」と間抜けな声しか出せなかったけど、獄寺君は「ナイス野球馬鹿…!!」と、珍しく山本を褒めていた。 そして、「家の事情なんて、そう気にするもんじゃないですよ!」と言って、励ましてくれた。 ……………………………うん、「俺んちなんて、もっとドロッドロのグッチャグチャですから!!」と、親指を突き出してナイスな笑顔で言われた事は除外しよう。あまりの驚きにあごが外れてしまった。 そして世の中では日曜日、結果的にみんなを呼んで並盛商店街をブラブラする事になったのだ。 まぁ、京子ちゃんが来てくれて、俺はそれだけでも嬉しさで昇天しそうな勢いだ。 だけど、一緒に呼ばれたリボーンが「帰ったら、補修の分の勉強、ネッチョリやるからな」とか言って来たので、今はどちらかと言えばそちらの方が致死率高いと思う、うん。 とまぁとにかく!! せっかく皆で遊びに来たんだ! 目一杯楽し──────── 「目ん玉魚雷、発射ぁあ!!!」 ────────めそうにない…!!! 目ん玉魚雷と称してランボが目に被せていた物は…─────────……女物の『下着』だった。 「ちょおおぉ!!?ランボそれ!!早く返してこい!!!」 「発射ぁ!!…プテプテプテ……発射ぁ!!…プテプテプテ……発射ぁ!!!…プテプテ……」 え、ちょっと神様。 俺、何か悪い事した………??? ・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・ 「はぁ………」 公用の休憩スペースにある椅子に座り、セットになっている机にひじを乗せる。 ちゃんとした頬杖にもなっていないその体勢のまま、盛大なため息をついた。 さっきからちび達の面倒見で、全く休めた気がしない。そろそろ過労死しても可笑しくない筈だ、もうむしろ楽にしてくれ。 「お疲れさま、ツナくん♪」 「きょ、京子ちゃん!」 突然横に現れて、缶ジュースを手渡してくれた京子ちゃん。 その明るい笑顔に、顔がボッと赤くなるのを感じた。 「い、いやっ、そんな!これぐらい!な、慣れてるから!!」 「ふふっ♪」 慌てて赤い顔でごまかす。たぶん説得力は皆無だっただろうけど、純粋な京子ちゃんは気にしていないようだった。 その後、短い沈黙が俺たちを包む。聞こえて来たのは、ちび達がジュースをゴクゴクと飲む喉の音だけだった。 そして急に─────── 「……ツナくん」 「!!?」 ───────京子ちゃんの顔が、目の前に迫っていた。 栗色の髪に、それと同色のキラキラとした汚れの無い瞳。 その全てが脳内にドアップで伝達され、再び顔が内側から焼ける様な感覚を覚える。 ち、近いっ!!! そう思った、その時だった。 「あれ、なんだろう?」 「えっ!!?」 そう言って、京子ちゃんが指差したのは、俺たちの後ろに建っていたデカいデパート。 そして、次の瞬間─────── ドカアァァァンッ!!! ────────辺りに巨大な爆発音がこだました。 「んなぁああ!!!??」 「…!!ツナくんあれ!!」 「えぇ!!?」 京子ちゃんの切羽詰まった声を聞き、彼女が指差している方角を向く。 そして─────────── ドシャッ!! 「あでっ!!」 「ぅあっ!」 人が降って来た、それは間違いない。 だけど、どうしてまた……? 「す、すみません!!」 「!!」 彼の額には、空色の灯りがともされていた。 これは、まぎれも無い──────── ─────────────死ぬ気の、炎。 (この人、一体……!?) (!!……この方は…!) (なんで、こいつがここにいんだ…?) [←PREVIOUS][NEXT→] [戻る] |