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時代劇ファンタジー
画竜点睛( 台本)=三章=
語り「それから龍吟はお咲に心を開き、二人はいつでも離れる事は御座いませんでした。一緒に仕事をし、お金を稼いで暮らしておりました。さて…出会ってから13年がたった、ある日の頃でございます。」

季節は夏に変わる。

照明がつくと団扇を持った龍吟とお咲が入ってくる。


龍吟「今日は特に銭が入ったね。何か買ってあげようか。」
お咲「え?いいよぉ、龍吟が好きなもの買ったら?」龍吟「いいんだよ、お咲にはあまり贅沢させてやれないからね。たまには甘えてみな。(店をちらっと見て)…そうだ、着物はどうだい?それ、会ってから何年も着ているじゃないか。繕うのも、そろそろ限界だろう?」
お咲「本当に?有難う、龍吟!」
龍吟「ほら、自由に店に入って好きなの選びなよ。」お咲「うん!どれがいいかな…(うろうろしているが、やがて足を止める)」
龍吟「何だい、それがいいのか?」
お咲「あ、い、いや…」
龍吟「ふぅん、赤に金の鶴があしらってあるのか。中々いいんじゃないかい?」
お咲「でも…高いでしょう?」
龍吟「いいんだよ。いつものお礼だ。おい旦那!これおくれよ!」
店の主人「へい、毎度!」
お咲「本当にいいの??」
龍吟「いいって言ってるだろう?何を遠慮する事があるんだい。ほら。(着物を渡す)」
お咲「…ありがとう…ありがとう!私、これ一生の宝にするわ!」
龍吟「そんな大袈裟な…」
お咲「大袈裟じゃないわ。私、贈り物なんて初めてだったから…」
龍吟「そうなのかい」
お咲「…私ね、昔いた村では独りぼっちだったの。お父さんもお母さんも赤ちゃんだった私を置いて何処かへ行ってしまって。」
龍吟「…寂しかった、のかい?」
お咲「寂しかったし、辛かった。村の子達からは虐められ、大人からは無情な目で見られたわ。私は何で生きてるのかなって思う日もあった。」
龍吟「…そんなに…」
お咲「そんなある日、大人達は私を湖に連れて行って生け贄として殺そうとしたの。」
龍吟「何だと!?」
お咲「お米は凶作で取れないし、山では獲物がかからない。きっと山上様と水神様が怒ってるんだと言って私を生け贄に儀式を行おうとしたの。」
龍吟「…酷いねえ…人間ってのは。苦しさ逃れに簡単にヒョイと他の人間を見殺しにする。」
お咲「生け贄の前日、村を濁流が襲ったわ。私は水神様の祠へお参りに行ってたから無事だったの。怖くて祠から出ていけなくて、暫くしてから出て村へ行ったら、龍吟に会ったのよ。」
龍吟「そうか…村が無くなったとき、辛かった?」
お咲「辛かった…けど、少し嬉しかったわ。こんな事言ったらダメなんだろうけど。」
龍吟「そっ、か…」
お咲「龍吟は?」
龍吟「は?」
お咲「私、まだ龍吟の事、詳しく知らないわ。それに、貴方私に隠していることあるでしょう」
龍吟「そんな…そんなもの、ないよ」
お咲「顔見たらばればれよ、龍吟ったら分かりやすいもの。」
龍吟「…知らなくて良いさ」
お咲「知りたいの」
龍吟「いえない」
お咲「ずるいわよ、私は言ったのに」
龍吟「…いったら、お前があたしを嫌うやもしれない」
お咲「嫌わないわよ」
龍吟「怖くなるやも…」
お咲「大丈夫だから!!」
龍吟「っ…」
お咲「ね?今までずっと一緒にいたじゃない。隠しっぱなしじゃ、息が詰まっちゃうわ。話して、お願い。」
龍吟「…馬鹿げてる、と、思わないか?」
お咲「思わないわ。」
龍吟「笑わないで、聞いてくれるか?」
お咲「勿論よ。」
龍吟「…(覚悟を決める)…あ…たしな…実は…り、龍、なん、だよ…」




龍吟「嫌いに、なっちまったかい?いや、あたしを殺すかい?あたしは化け物だからね…でも覚悟は出来て…!」
お咲「なぁんだ、そんなこと?(笑う)」
龍吟「…へ?(ポカンとする)」
お咲「だって、よく夜中に龍の姿に戻ってたでしょ。私、寝たふりしながらいっつも見てたんだよ?…私、龍吟の龍の姿も、大好きだなぁ。」

龍吟「え、あ!気が抜けたときについ…って…(ため息を付き、どさっと腰を下ろす)…全く、お前さんときたら。今までのあたしの心配は何だったんだい。」
お咲「ふふっ勝手に心配してたんじゃない。」
龍吟「というより、よく驚かなかったね。気味悪くはなかったのかい?」
お咲「というより、綺麗だなぁと思ったわ。青と白の鱗とかね。」
龍吟「不思議な子だねぇ。」
お咲「何年たっても姿が変わらない龍吟より普通よ。」
龍吟「そうかねぇ。」
お咲「それで?」
龍吟「…?なにが?」
お咲「まだ龍吟の正体しか教えて貰ってないわ。龍吟の昔話をしてよ。」
龍吟「…あたしの…昔話…」

時間が遡るような効果音
舞台、全体的に薄暗くなり、龍吟とお咲の所に大きなサス。後ろはブルーサスで演技。

龍吟「…そうだ、あれは何百年前の事だろう。あたしは、ある村の壁から1人の村人が禁忌を破ったために生まれた。」
お咲「どんな禁忌?」
龍吟「ある絵描きが書いた龍の瞳を入れてはならない。しかし村人は欲望に駆られ私の目に瞳を入れた。命を吹き込まれたあたしは天高く上り、神の間へついた。」
お咲「それで?」
龍吟「龍王様の元で数年過ごしたが、周りの目は酷いものだった。周りにいる龍達は何奴も自然から生まれた純粋な龍ばかり、それに引き替えあたしは人間の手から生まれた龍。画竜と呼ばれる人工の守神…」
お咲「虐められたの?」
龍吟「…(頷く)しかし、その時のあたしは感情なんてモノを知らなかった。ただ置いて行かれまいと必死に龍として必要な術などを覚えることしか頭になかったからね。私はどんどん知識を増やし、何時しか他の龍を抜くようになった頃、辺りの目はあたしを妬む目に変わっていた…」
お咲「妬む…?」
龍吟「龍王様の手前では静かな龍達も、それ以外では酷い仕打ちをしてきた。お前は恥曝しだ、龍王の前に出る資格などない、天界から出て行けと言われた…」
お咲「…ひどい、ね…」
龍吟「しかしあたしはごもっともと思い、天界を去り地上で暮らし始めた。…そして、暫くしてからお咲、お前に会ったのさ。」
お咲「…なんだか…私に似ているね」
龍吟「そうさなぁ…だから、だからこそ一緒に居れたのかもな。…なぁお咲、あたしは今幸せだよ。幸せって、こういう顔をいうんだろう?」
お咲「うん、そうよ。…でも、幸せは…ずっとは続かないものなのよ…」
龍吟「…え…」
お咲「!あ、ううん、何でもない!ほら、暗くなっちゃうよ、早く宿さがそ?」
龍吟「あ、あぁ…」
お咲「じゃあ私、先行くね!(はける)」
龍吟「…(立ち止まってお咲を見ているが、やがて胸を押さえる)…何だ…この気持ち。…誰か…誰か、教えて、くれよ…(つぶやき、去る)」


暗転


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