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SS置場5
バイト10 E(L)

バイトしりーず。しまった、VDなのに!イベントものを書かない拙宅にしては珍しく季節物を扱う転校生を忘れていた−!!












寒さに肩をちぢこませながら帰路に就く。
バイトを始めるようになってから暫く経った頃、世話になっていた親戚の家を出た
ひとつには、自衛のため。
あの家に居る限り、自分のプライバシーを保持するのは難しく、従兄弟やその親にバイトの事を知られる可能性は
少しでも減らしておきたかったのだ
そんな仕事はみっともないとたしなめられるのなら、まだいい。
親、よりも従兄弟の方に知られたら・・・
(・・・もしかすると、事務所の人間に "キャスケット"を売りに出すかもしれない)
そうでなければ、勝手に事務所に新たな借金を増やす可能性も大きい
(そんなの、受忍できないぞ)
少しでも早く借金を返済して、事務所とは縁を切りたいのに
その為には 本当は家賃のいらない従兄弟の家に居るのが完済の近道なのだが、勝手に連帯保証人にされた経緯を考えると
バイト先の事務所の存在を知られる方が怖かった

広さや綺麗さ等、普通重視するべき条件を全く無視して安さだけを追求して探した部屋は、駅から遠い。
それでも、精神的にはあの家を出て随分と楽になったように思う
("風呂なし"の部屋なら、もう少し安い物件もあったんだけど。)
バイトの後は 人前で見せられない跡が残っている事もある身ではそれも難しく、ユニットバスのある部屋を選んだ。
"風呂トイレ共同"の物件も考えた事は考えたのだが、そういうところは "掃除当番"がある。気軽に外泊出来ないのは
駄目だと判断しての事だった
借金の件で多少のうしろめたさを感じていたのか、それとも学生にあるまじき額のバイトに怪しいものを感じていたのか、
すんなり家を出る事を許された

壁は薄いし隙間風もあって寒いんだけど・・・と思いながら、それでも外から戻れば温かい
かじかむ手で鍵を取り出し、玄関を開ける
寒いなりにも外気と違って まだ温かい部屋の空気に ほっとする前に、玄関の異変に ぎょっとした

「えっ?」
何、・・・コレ。

「気持ち悪い!」
玄関を入って直ぐの上がり框から向こうへ、小さなビニール袋が散らばっている
袋自体には見覚えがあった。
(確か、この棚に置いて・・・)
玄関横に、2つ積み上げたカラーボックスを見上げて納得した
「あぁ、なんだ。 ここから逆さに落ちたんだ」
使いさしだったから 開いた口から少しずつ零れて最終的に入れ物ごと落ちたのだろう
落ちた袋を拾い集めながら一人言が零れる
「もう、びっくりしたなぁ! まるでバラ撒いたみたいに見えるんだもん」
泥棒でも入ってちらけていったのかと思ったじゃないかと 落ちた袋を綺麗に片付けながら今度は落ちないよう
しっかり奥へと仕舞い込む
それでも室内に足を踏み入れながら出掛ける前と変わりないよなと密かに確認してしまって、
(何をびびってんだ)
ばからしい、と自分で自分の行動を笑って、食費節約の為の自炊だと、買ってきた食材を手に そのまま
キッチンへと向かった

元々家事の手伝いもしていたしバイトのマンションでも夕食を作ったりしていたから最近ではすっかり手付きも
堂に入っていて、レパートリーもそれなりに増えた
お店で出す料理じゃなくて自分が食べるだけなら十分だ
それ1つで勉強机から食事時のテーブルまでを兼ねる丸い卓袱台の上に皿を並べて、さて、頂きますと箸を
手に取ったところで呼び鈴が鳴る
「また?」
思わず漏れた言葉は訪ねてきた相手が誰だか予想がつくからだ

「飯喰いに来た」
案の定、玄関の外には見慣れた顔が平然と待っていて、
「・・・いらっしゃい」
大学では顔を合わせるもののバイト先では会う事のなくなった相手を、複雑な思いで室内に招き入れた


「"あそこ"で何度か喰ってたからな。たまにこの味が欲しくなる」
借金持ちの一人暮らし。友人達と遊び歩く余裕もないと自分の分しか用意しなかった食器類は、結局の所
もう一揃い、ローの分を追加する羽目になった
それくらい ちょくちょくやってきては一緒に夕食を食べていく。
いつの間にか自分の食事のタイミングをすっかり把握してしまったローは、バイトの事を知っているからか
無理に外へ遊びに誘う事もなく時折は酒などを持参してくる
(前のように、車で連れ出される事もあるんだけど)
『その帰りにホテルに寄って一泊』 ・・・というのがお約束になりつつあるのだが。
この部屋でコトに及ばないのは壁の薄さを考慮してのことだと思うけど、自分達の関係をどう捉えるべきだろう
(バイトの絡まない場所での、個人的な関係。)
今から思えば、"初めて"が外だったのも バイト以外での関係を作る為・・・のような気がしなくもない
少なくとも今の自分は"キャスケット"としてローと寝ているのではなかった
流されていると言われればそうかもしれないが、ローが強引だとはいえ、惹かれているのを自覚した上で
求めてくる彼に応じている
気持ちを伝えようとか、今は考えていない
(自分が"キャスケット"じゃなくなってからじゃないと動く気になれない・・・ってのも、あるかなぁ)
すっかり定位置となりつつある向かいの位置に座って遠慮無く料理に手を付けるローを眺めながら、バイト先では
1度抱いたきり、すぐにバンと交代したのもローが"バイト上の関係"を嫌ったからじゃないか、なんて それは少し
自分にとって都合が良すぎだろうと思いながらも、つい、期待してしまう
どちらにしても自分達の関係に名前をつけるべく 先輩に どう思っているのか尋ねるのはまだ先だ。
その意味でも、早く返済を終わらせたいと考えていた





 
「慣れたよなぁ、"キャスケット"も」
バンからの口付けを受けながら 縋りどころを求めてその背中に手を回す
そのキャスケットをしがみつかせながら、手慣れた動作でするすると服を剥ぐバンが ぽつりと感想を漏らした
バンによれば "客層"もだいたい落ち着いているという
更なる刺激を求められるかと考えていたのだが、客の顔ぶれはそれなりに入れ替わりながらも一定の数を満たしていて
今のところ事務所から"売り"を指示される事は無さそうだと話していた
しかも、顔ぶれが変わるのは自分にとって良い事なんだそうだ
同じ客ばかりだとどうしても同じような内容では飽きがくる。 また、妙に肩入れされて変なファンがつくのも好ましくない。
事務所側としても収入さえ見込めれば無難に済ませる方が良いし、商品の寿命も長持ち出来る、という打算があった
(先輩は、どう思っているのだろう)
こんなバイトをしている自分を、セフレならともかく、特別な相手と考えられるのだろうか
(汚い・・・とか、思わないのかな)
それも、自分の友人と寝てる相手を。
(平気なはず、ないよな)
バンに不満があるわけじゃない。 別の場所で会えばきっと友人として付き合えると思う。
でも、このバイトからは早く開放されたかった
「ん・・・、バン・・っ、も、座らせ、て」
考え事をしているうちに キャスケットを立たせたまま舌で性器を刺激していたバンの髪を掴んで訴えた
己の局部に彼の頭を押しつけるようなその姿勢は どうしたってキャスケットの羞恥心を煽る
「も、立ったまま、じゃ、ツライっ」
寝室への移動を強請る自分の目が欲に濡れて潤んでいるのを自覚しながらもキャスケットはその顔を隠さなかった
(バンとしてるところくらい、見られても、平気)
ここで1度だけローに抱かれた事があった
あの時は、どうしたってプライベートを覗かれている感覚が消えなくて、恥ずかしくて恥ずかしくて堪らなかったのだ
「我慢できない?」
ぺろ、と先端を舐められて ふるりと脚が震える
「ぁ、も、我慢っ、できな・・・ひぁっ」
前触れもなく指を差し込まれ、声を上げて仰け反った
「あっ、あっ、や!」
膝が頽れないように脚を踏ん張れば どうしたって中を抉る指を締め付けてしまう
それを知っていて バンは前を弄る舌を休めず、後ろの指を抜き差ししてキャスケットを苛んでいた
「暫くそのままな。立ったままの方が締め付けてキモチーだろ」
ばん、の、どえすっ
切れ切れの声はマイクが拾えたかは分からない
このくらいの意地悪は以前からの常連へのサービスだからと、時折おりまぜてくるバンは どうやってかその時モニター室に
いる客の顔を把握しているようだった
がくがくと膝を震わせて必死で立つキャスケットは空を仰いで涙で霞む目を必死で見開く
半開きの唇の奥で戦慄く舌をちらちらと覗かせながら 感じすぎて零れた涙が頬を滑っていくのを余さずカメラは捉えていた







(いくら慣れたからってさぁ、あれはなくない?)
慣れたという事は余計に身体も反応しやすくなっているというのに酷くないかとぶつぶつ文句を思いながら帰宅する。
なんにしろ、週末のバイトも終わりボロいながらも安心できる我が家へと帰ってきたと張り詰めていた気も緩んでいた
バイトの後で自宅に戻るのは知っているはずだから、今日辺りローがやってくるかもしれない
先輩が来たってアレが食べたいだとかコレを買ってこいだとか、我が儘放題言われるだけなのに、顔を見るだけで
疲れが取れる気がするだなんて、末期だよなと自分で苦笑する
身体は割と慣れてきたのだ。だから、バイト後に感じる疲労は精神的な疲れなんだろう
(あそこじゃやっぱり湯船でゆっくりとか出来ないから、今日はお湯にのんびり浸かろうかなぁ)
この部屋はユニットバスだったけど、お湯を張ってゆっくりするのが "夏でも湯船派"の自分がたまに味わう贅沢だった
(この前先輩に貰った入浴剤があったし、あれ使おうかな)
反対に冬でもシャワーで済ませるローには入浴剤は必要ないらしく、先日、貰ったけど使わないからと家に持ち込んで
置いていった
案外、風呂好きの後輩の為にわざわざ買ってくれたとか? いや、ローなら"買ってきてやったんだからありがたく使え"と
言うはずだから、やっぱり誰かから貰ったんだろうな
そんな事を考えているうちに体も気分も軽くなった気がして、今日はどの入浴剤にしようかと思案しながら玄関を開けた途端、
目に飛び込んで来た物体に短く声を上げてその場に固まった

主人を迎える如く、ぽつんと廊下の真ん中にボックスティッシュが落ちている
確かに、それは玄関に置いてあった
以前ゴミの袋と同じくストックとして玄関脇のカラーボックスに収納してあるそれは、滑りやすい袋と違って接地面も大きい。
そもそも落ちるような場所には置いていないのに。3つばかり積み上げてボックスの高さ目一杯まで置いたソレは 誰かが
抜き取らない限りあんな風に床に落ちているはずがないのだ
「え・・・。でも、俺、さっき鍵開けて入ってきた・・・」
玄関の鍵は閉まっていたのだ。だから、自分以外にこの部屋に入れる人間は居ないはずだ
(合い鍵? まさか!)
最初に貰った鍵は今も手の中にあるし、予備にと作った鍵も財布にくっついている
(・・・ってことは、ピッキング? 空き巣、なのか?)
こんなボロいアパートに盗みに入るとも考えにくいし、わざわざ侵入した形跡を残していく空き巣なんて変だろう
じゃぁ何なんだよ!とパニックを起こしかけていたその背後で、閉めかけたままで止まっていた玄関扉が ぐい、と外に引かれて
今度こそ悲鳴を上げて飛び上がった
「っわああああ!!」
「?!」
後ろを振り返りつつ尻餅をつくという器用な芸当を見せながら、背後に立っていた人物を見て今度こそ力が抜ける
「せ、せんぱいぃ?」
そこには、予想以上の反応を見せた家主を 呆れた顔で眺めるローが立っていた








「バン、予定変更だ。"キャスケット"に虫が湧いた」
そのまま連れ出されて案内された部屋の中で、"キャスケット"は落ち着かない気持ちでソファに座っていた
初めてお邪魔したその部屋は どうやら先輩の住んでいるマンションで、ローは連れてくるなりどこかに電話を掛けた
話の途中で聞こえてくる呼び掛けは通話の相手が少し前まで一緒に居た人物だと示していて、なんで今、バンと話す必要が
あるのかと顔を向ける
こちらの視線には気付いているのだろうに、ローは一向に介すること無く話を続けているから 横で自分が聞いていてもいいのだろう
キャスケットの名前が出た事もあって 自然と意識が電話の内容に引き寄せられる
「・・・あぁ。こいつの未払い分のバイト代、今どれくらいだ? ・・・そうだな、それ全部、すぐに支払い処理してくれ。うまくできるか?」
聞こえてきた話は予想外のもので、どういうことだとぎょっとしていると、ローは『あとは以前のスケジュールに戻せばいいだろ。
今まで待たせて悪かったな』と言って通話を終えてしまった

「あの。・・・今の、話って・・・」
漏れ聞いただけじゃ半分も話が見えない
どういう事か説明を求める視線を送ると、ローは 話してやるから待てという素振りで席を立った
見れば、飲み物なんかを出しているから 疑問には全部答えてくれるつもりなのだろう
(そういえば 最初に言ってた虫ってのは何なんだ)
飲み物を手に戻ってきたローに、最初に"キャスケットに湧いた虫"について質問すると、彼は なんだそんな事、という顔で答える
「ま、キャスケットのコアなファン・・・っつぅか、要するにストーカーだな。そいつが沸いたってこった」
用心していても顔を知られているのだからいつかは付くだろうと思っていたがと言われて、出歩く時は一応サングラスに帽子を
着用してたんだけどと萎れて呻く
「じゃぁ、俺。バイト・・・クビになんのかな?」
面が割れて身バレしたならあのバイトを続けるリスクは大き過ぎる。加えて住んでる場所も知られてしまったのならストーカー対策も
必要になってくる
「いや。クビじゃなくて、自主的に辞める。 まぁ、あの事務所、近々潰れるし今の内に稼いだ分だけ回収しとけ」
「は? 潰れる?」
驚いた声を上げた自分に笑ってローが続ける
「正確に言えば "これから潰す"んだ」
「・・・どういう事?」
潰すって何。そんなのローの意志で出きるのか。それなら事務所にいるバンはどうなるんだ?
次々と浮かんでくる疑問が多すぎて何から口に出せばいいのかと眉を顰める
ローはローで、それを分かっていてゆっくり珈琲を飲んでるあたり、焦らして遊んでいるのかと文句を言いたくなった
「落ち付けって。まず、おまえの心配は杞憂だ。潰すのは俺じゃねぇしバンでもない。そもそもバンはあの事務所の人間じゃないんだ。
簡単に言えば、スパイみたいなもんだな」
「スパイ?!」
簡単にって、じゃぁ、複雑に言えばどうなるんだ?
すぐに浮かんだ疑問が顔に出ていたのだろう。 おまえ、ホント表情が正直だよなと目の前のローが苦笑している
そのローの笑みがゆっくりと近づいてきて
"種明かしは後でいいか"
そう聞かれた時には すでに彼の唇まであと1センチという距離だった




「それじゃ、バンって探偵さんなの」
初めて先輩の家にお邪魔したその日の内にベッドに連れ込まれてお泊まりだなんていう事になったのも"ストーカー"に
動転していたからだ、と自分に言い訳しながら ちゃっかり種明かしをしてもらう
ローのいう種明かしは半分寝物語のようなものだったが、それでも状況は見えてきた
「そんな大層なもんじゃねぇよ。何でも屋みたいなもんか? 警官とか刑事とか、その手の人間の下請け仕事も受けてるけどな」
つまりバンはあの事務所を潰すに足る証拠のようなものを探りに潜入していたらしい
そこで、自分の事を知った。
まだ世間にも出ていない真正直な学生が、このままじゃ食い物にされちまうし下手をすれば逮捕劇に巻き込まれる
そう思ったバンは自ら その学生の売り方を企画して自分が担当に回るように立ち回った
「それが俺の後輩だってのは知らなかったみたいだが」
こいつとは同じ大学の知り合いだと白状したローが、証拠を掴んでも少し待ってくれとXデーを引き延ばした
「なんで、そんな事」
「おまえが自分から辞めたいって言うようにもっていくつもりだった」
このバイトを始めたのは、借金の肩代わりを手切れ金代わりにして従兄弟達と縁を切るつもりだからだと、とっくにローに知られている
「俺がバンの代わりに顔を出した頃に"辞めろ"っつっても、どうせ聞かなかっただろ、てめえ。」
「・・・別に、今だって。辞めたら借金の返済が追いつかないだろ」
確かに、今では 早く"キャスケット"でなくなりたいと願ってはいるけれど。願うだけでは借金の額は減ってはくれない
「辞める方法だってあるじゃねぇか。手元に残った金、全部俺に預けろ」
思ってもみない事を言われて 意外な思いで すぐ隣に寝そべるローの顔を見る
「何? 資産運用でもするわけ?」
別にボケたんじゃないのだけど、はは、と小さく笑われて首を傾げた
でなければどうするつもりなのか
「弁護費用に充てんだよ。もともとてめえの借金じゃねぇだろ。借金自体を無くしちまえ。肩代わりなんかしなくても縁は切れるし、
それまでの宿提供の恩を返すってんなら刑事告訴はしないって事で手を打ちゃいいじゃねぇか」
バイトを嫌がってんのはバレてんぜ。親戚にはめられて、厭世的になってたのも。借金肩代わりに身を売るバイトだとか、
そんな自暴自棄なことも、もう、しなくてもいいってくらいには立ち直ってんだろ?
「・・・・・。」
ローの言葉に何も言い返せなくて、そのまま ぼふっ、と シーツに頭を伏せる
「最初の頃に裁判に持ち込めって提案しても受け入れなかっただろうけど。なぁ、今じゃ、説得に耳を貸す余裕くらい、あるよな」
この人は、そんな心境の変化も分かるくらいに、俺の事を見ていたのだろうか
それとも、俺に近付いたのは・・・・・、
「・・・んだよ。そんな顔すんな。バンの仕事は話しただろ。職業柄、有能な弁護士だって当てがある。無口で無愛想だが腕はいいし、
ありゃ ただのツンデレだって噂もあるんだが、・・まぁ、人が良いから事情を話せば親身になって取り組んでくれる。ペンギンって
奴なんだが、そいつに任せとけば・・・って、おい。違うのか?」
説得を続けようとしていた先輩は、首を振る俺に気付いて言葉を止めた。
じゃぁ何を気にしてんだよと顔を覗き込まれて のろのろとローの方を見返す
「ひとつだけ、気になったんですけど」
なんだ、と目で問われて 思い切って口を開く
「先輩が、俺に 近付いたのは。 説得して気を変えさせる為・・・ですか?」
「は、」
勇気を出して聞いた一言で、ローは何とも言えない顔を見せた
気が抜けた、という顔と、何言うのおまえ、という半分呆れたような半笑いの顔と、最後に、にやりと 愉しそうで少し意地の悪く見える、
いつもの彼の笑みを浮かべた

「何、おまえ。俺に "おまえが好きだから放っておけなかった"とか言って欲しいの。あぁ、それとも、好かれてるかどうかも、自信ねぇ?
説得の為に口説かれたとか思ってんのか。」

からかう口調にカッと頬に血が上る
だって、俺はまだ"キャスケット"で、先輩の気持ちを確かめる事も、まだしていなくて・・・
少しばかり思い上がりたくても、やっぱりこんなバイトしてる奴に本気になんてなれないよなとか、すぐに不安が押し寄せてきて――
・・・だめだ、やっぱり、まだ聞けない。
そう思って 強く目をつぶって顔をシーツに押しつける
ローが何て言っても聞こえないように布団にもぐりこもうとしたところを、思わぬ力で引っ張られて 気が付いた時には先輩の腕の中だった

「ばーか、逆だ。 おまえに興味を持ったから 説得しようと思ったんだ」

でなきゃバンを抑えて引き延ばしなんてしねーって。

耳元で先輩がそうぼやくのを信じられない思いで聞いたシャチは、瞼の奥から溢れてきた滴をローから隠すように 自分を抱える彼の胸に
ぎゅっと赤く染まった顔を押しつけた








 
 そしてもうひとつの顔は消える 












このバンさん、スピンオフで誰か書いてほしいよ〜 「探偵はBARにいる」みたいな感じで!いや、大泉さんで想像
しないで下さいよ、原作の方で想像して!バイトはほぼキャスサイドを主体で書いてるからバンさんサイドが殆ど
出てないでしょう。だからスピンオフでバンさんが見たいです。あぁ、でもハードボイルドじゃないけど、ああいう
雰囲気のって書けないからなぁ〜 このシリーズの最初の頃はキャス公式名決まってなかったのですよ。ですが、
キャスケット以外に本名があるという設定にしていたので公式が決まってからはやっぱりこの子はシャチが本名
なのかなぁと思いながら書いてました。で、最後の最後に1回だけ出してみました、文中に。 前回に言ったように
転校生と(ローとキャスの関係が)少しかぶってきたかなと思ったのでエロスを書く為に始めたバイトシリーズを
終わらせる事にしました。 ちなみに、現在進行中の恐怖をネタに使っております。(帰宅したら物が落ちてるの、
実話です。誰か理由をつけてくだしあ!怖い!) あと、盗む物が見つからなかった空き巣が手袋やらの遺留品を
腹いせにわざと落としていく事はたまにあるそうです。これも友人の実話。まぁ、キャス宅はボロアパートなので
盗み目的の人間は押し入らない前提なので文中ではこの可能性は初めから削除しています。



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