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SS置場5
転校生12
明けましておめでとう御座います。今年もよろしくお願いします^^ まだ本始動の雰囲気が
やってこないので去年UPした転校生のキャス視点を短い一場面をだらだらと。出来はイマイチ。











(よかった。普段通りにできた)

待ち合わせギリギリに駆け込んだら 既にキッド以外が揃っていて
遠目から見ても目立つ集団(目立つのは彼らの身長のせいばかりじゃない)だと改めて実感する
普段は自分も中に紛れているから意識した事はなかったけど、彼らひとりひとりの個性は
黙って立っているだけでも人目を引いた
それが纏まって立っているのだから華やかなことこの上ない
(寄ってくる女の子なんて それこそ山ほどいるんだろうな)
クリスマスだって、その気になれば一緒に過ごす相手を見繕うのなんていくらでも出来たのだろう
仲間内で集まって、何人かは朝までそこで過ごして。
(ローなんて 帰る自分に合わせて一緒に出てくれたりしてさ)
・・・あの時の、キス、は。 クリスマスの雰囲気に流されただけの、軽い冗談なんだよな?
ローだったら、ふざけて男相手にキスするくらい平気でやりそうだ
表だって近付いてくる女の子は居ないけど、陰じゃ あれだけ人気があるんだから 色恋の相手に不自由はしないだろう
(ローにとっちゃただの冗談かもしれないけどさ)
自覚したのは最近の事とはいえ、キャスケットはそういう意味でローを好きなのだ
その場のノリでの軽いキスでも意識せずにはいられない
(ぎくしゃくしたり赤くなったりなんか するなよ、俺!)
変な気合いや覚悟をしていたら うっかり待ち合わせの駅を乗り過ごした
慌てて引き返したのだが乗り継ぎのタイミングを外してしまって時間ギリギリになってしまった
なりふり構わず走ってきたから マフラーなんかは取れかけているし、飛ばされそうになった帽子は手に掴んで持ったまま。
ようやく息が整って顔を上げれば自然な動作でローがマフラーを巻き直してくれる
(俺、いつから、こんなに面倒見られてたんだろ)
・・・今、ものすごく自然だった
それを不思議に思うことがないくらいに、ローの隣にいるのが馴染んでいて、
クリスマスぶりに見る友人の顔が間近にあるのを やっぱり見た目も整ってるよなぁと眺めていたら
目があったローの唇が ふ、と笑った

どきん、と鼓動が乱れる
(しまった!意識しないようにしてたのに)
彼の唇の動きを見た途端に唇を合わせた時の感触が蘇ってしまって 思わず視界から逃すように視線を逸らす
こんな事でどきどきしてるとか、おかしいだろ。ローにとっちゃ冗談なんだから
「あ、りがと。」
なんとか喉から声を押し出す
・・・大丈夫、普通に話せる。
「久しぶり」
いつもどおりの笑顔も作れた。大丈夫、変な態度、とってないよな。
幾分緊張していたキャスケットに 横からキラーが声を掛けてきた
避けたかった話題を直球で質問されて、渋々ながらローに送られて帰った事を白状する
それでも、キラーに振られた話題ですっかりいつもの自分達の雰囲気になった
遅れてきたキッドが混ざる頃にはキャスケットの心配なんかは杞憂だったと思えるほど自然にしゃべれるようになっていて、
移動を始めながら初詣についてみんなが教えてくれるのを珍しく耳にする
今までキャスケットの住んでいたところではこんなに大きな神社は近場になく、友達と初詣に行くのも少し遠出になる為
二年参りは初めての経験で、彼らの説明を大袈裟なんじゃないのと思いながら聞いていたら はぐれるなとローに腕を掴まれた
キャスケットに土地勘がないことを理由に "すぐ隣をキープしていろ"と引き寄せられる
のろのろとしか進まないなら掴んでいなくてもはぐれないんじゃないのかと思うのに、ローだけでなくキッドやキラーまで
自分がはぐれると言う
「なんで俺がはぐれる前提なんだよ!」
ぷぅっと頬を膨らましてもみんな笑うだけだから 単にからかわれているのだろう
それでも、ローの手はキャスケットの腕を掴んだままだ
(でも、無理に引き剥がすのも 意識してるみたいで変・・・だし。)
ちらりと目で窺ってもローは顔色も変えずに平然としていて、からかわれてるんじゃなくて本当に迷子を
心配されているのかとも思える
腕を掴まれているのは少し落ち着かないけど 別に手を繋いでるわけじゃないから、変じゃないよな?
あんまり近寄ると あの時の距離だとか触れた手は冷たかったのに唇だけは温かかった事とか、またぞろ
余計な事を思い出してしまいそうで あちこち視線を彷徨うろつかせたキャスケットは結局キッドの背中に目を落ち着けた
「確かにキッドの身長だと目印にはなるよね」
みんなの意見に同意していると、
「はぐれた時の待ち合わせ場所 どこにする?」
なんていう話になって驚いた
どうやらこの人混みでグループがバラバラになる事はキャスケットが思っていたよりもよくある現象らしい
「本宮から北側の出口でいいんじゃね? その後出店回るだろ」
「おう。間違えんなよ、右じゃなくて左側だぞ」等という話から、出口は2ヶ所あるらしいと知れるが
初めて参拝するキャスケットは口を挟まず彼等の打ち合わせを聞いていた
そうこうするうちに参道の中に入る事が出来、串焼き、たこせん、綿あめにカステラ、と参道の両側を埋める
色とりどりの出店に目を奪われる
「きょろきょろしなくても全然進まねぇからじっくり見れるって」
「この分じゃ年越しはあの辺あたりで迎えるんじゃないか」
「鳥居をくぐってりゃ十分だろ。」
ペンギンが指さしたのは参道の真ん中あたりで、門からは幾分離れた場所だった
「あと20分で新年だろ。そこまで進むかも怪しいぜ」
確かに 振り返ってみても人の頭だらけ、続々と集まってくる人波で視界は埋まっている
二年参りってこんなに並ぶものなんだと変なところに感心していると ポケットの携帯が振動した
「あ。ボニーちゃんだ」
ジュエリー・ボニーからの少し早めの年賀メールを見ていると、「そろそろ通じなくなるから返信するなら急げ」と言われる
毎年、年越しの瞬間から暫くは電話が通じなくなるのはどこでも同じらしい
慌てて返信を打って送信してみたが、「あー、もう無理みたい」
送信できませんでしたの文字に声を上げた途端、ぐしゃりと帽子ごと頭が掴まれた
「あけましておめでとう」
キッドやキラーが何故かキャスケットの頭を撫で回している
子供扱いすんじゃない!と腹にパンチを入れていると周りに迷惑だからよせとペンギンに押さえられてしまった
左手はローに掴まれたままだから、キャスケットの両手は塞がったことになる
「落とすから携帯は仕舞っておけ」
「じゃぁ手を離してよ、暴れないから」
「連行されてるみたいだぞ、おまえ」
キッドのつっこみに、イーッと歯を剥きながらペンギンの手を振り解く
携帯を仕舞うキャスケットが解いたのがペンギンの手だけだった事に気付いたキラーが笑っているのを見て
はっとしてももう遅い
今、ローの手を外す絶好の機会だったのに。
幸いキラーは何も言う事無く、「門が開いた。少しずつだが列が動くぞ」と意識をそちらに向けてくれた
気付けば列のあちこちで新年の挨拶が交わされている
「明けましておめでとう、今年もよろしく」
遅ればせながらの挨拶に こちらこそ、と左右と前から一斉に応えが帰ってきた




「わ、あ!?」
境内に入ったところで もの凄い波に呑み込まれた
外で並んでいた時の混雑なんて比較にならない
帽子は鞄にしまっておいた方がいいと言われて脱いでおいて正解だったと胸をなで下ろす
キッドほどの高身長ならともかく、キャスケット程度ならどこかに飛んでいっても不思議じゃないだろう
「ってか、みんなどこ?!」
満員電車の数倍のぎゅうぎゅう詰めに目を白黒させているうちに流されていて、目の前にあったキッドの背中が見あたらない
「ちょ、痛い、痛い!」
長めの髪型のせいで後ろ姿が女の子に見えたのか、どさくさ紛れで、つねっているのかという勢いで尻が掴まれる
「っわぁ!?」
ぐい、と左手が引かれたのも、痴漢の仕業だろうか
振り解こうと思ったところで 門をくぐる前はローに腕を掴まれていたと思い出す
腕だったはずがいつの間にか手になってはいたが、この先にローがいるはずだ、とキャスケットは必死で
その手を手繰り寄せた

「混むって言っただろが」
なんとか再会したローに言われて斜め前方を見ればキッドとキラーの頭が見えた
その少し後ろにペンギンのものらしい帽子が見える
「まさかこんなになるなんて思ってなかった!」
離れてしまった3人の頭を眺めながらそう言ったキャスケットは ここで一人になっては困るとローと繋いだ手を
握り締め、空いた手でも彼の腕に掴まっていた
3人からローまでが離れてしまったのは流されたキャスケットに引っ張られてのことらしい
「このまま当分動けねぇから出口で合流だな」
この距離のまま付かず離れずで進むことになりそうだ
「出口に向かう前におみくじ引いてもいいかなぁ」
「いいんじゃねぇ? あいつらは興味なさそうだがな」
ぎちぎちの人波ながらも、それぞれの位置を確認して しゃべる余裕が少し出てきた
おみくじ引かないの?だとか 白馬がいるから後で見ていくかとか、とりとめのない話をしているうちに、
そういえば俺さっき痴漢にあった、ローの手も一瞬痴漢かと思って焦ったよと 先刻の出来事が口から零れた。
途端、「あぁ?!」と怖い声で睨まれる
「あっ!ごめん!別にローの手が痴漢っぽかったわけじゃなくて、え、えぇぇ?!」
怒った様子のローに慌てて言い訳するキャスケットが引き寄せられ、ぎょっとしているうちに腰に手が回って
驚きの声が上がる
「勝手に痴漢になんざ遭ってんじゃねぇ」
「ちょ、え、待、何」
ぎゅうぎゅうの人波の中、隙間がない程ぴったりとくっついて、おまけに腰に回った手はどこのカップルかと
言いたくなるような恋人距離だ
「痴漢避けだ」
というローの声が素通りしそうなほど、急激に体温の上がったキャスケットの心音が激しくて目が回りそうになる
(もうダメだ。平気な顔なんか、できやしない)
大丈夫だから離して、という一言が喉につかえて出ないキャスケットは、せめて顔だけでも隠そうと
鞄から帽子を取り出して深々と頭にかぶせた







 新しい年が明ける刹那

共に過ごした相手は "待ち人きたる" なんだろうか



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