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SS置場3
バイト5 L

バイトの続き。これはもうロキャス区分← でもスタートがバンキャスだからなぁw










「キャス――」
構内で、聞こえてきた声にぎょっとする

「っ、先輩!」
それ以上くり返される前にと慌てて駆け寄り ローを物陰に引っ張り込む

(先輩!外でその名前呼ぶのやめてくださいよ!ルール違反ですよっ)
潜めた声で文句を言っても相手はどこ吹く風で飄々としたものだ
「おまえが無視するからだろうが。」
一応周りに人が居ないのは確かめてから声を掛けたと言われて、避けていた相手と密着するように
思い切り向き合っている事に気付いて動揺が走る
「・・・だって、」
次に先輩に会った時に どんな顔をしていいかと決めあぐねているうちに、大学で顔を合わせてしまったのだ
「あんなの、あの部屋だけの限られたバイトだろ。外へ出たら割り切って忘れちまえよ」
・・・それができれば最初から先輩を避けちゃいない
「そ・・・うなんですけど」
言い終わる前にも俯いてしまい、腕を掴まれて顔を上げる
「そうガチガチに意識すんなよ。こっちだって居心地悪ぃ」
「・・・すいません」
意識するまいと思えば思うほど、以前の自分がローとどんな風に接していたかが思い出せず
ますます体が萎縮してしまうのを止められない

ふっ・・・と、溜息のようなものを感じて、また床に落としてしまっていた視線を上げる

あれ?と思う間もなく、気付いた時にはローの腕の中に居た
「ちょ、先輩っ!?」
ぎゅっと抱き締められ、腕の閉じ込められている。
この先輩は見た目スレンダーなくせに外見とは裏腹に柔術やパンクラスだとかにも興味を持っていて
一度捕まってしまえば少々の事では振り解けないほどの力を持っている――確かに、何度かふざけ半分に
技を掛けられて痛い思いをした事もあった
(だけど、今みたいな捕まり方は した事がないっ)
いつもと違ってどれだけ蜿いても離してくれない腕に焦りながら
「せ、先輩、」
離して、という言葉はローの胸に押しつけられてくぐもって届かない
なんで? なんで俺こんなとこで先輩と抱き合ってんの?と軽くパニックを引き起こした腕では、抱擁から抜け出すのは
とても敵わない

「あんまり可愛い反応されると、俺のものにしたくなる」

(え? え?!)
耳元で聞こえる言葉の意味を捉えかねているうちに、頬を掴まれて顔を引き寄せられた
「ん、―――っ、」
降ってきた唇を避けられずにまともに受け止める
(だめ・・・・だ、・・って―――)
かくん、と膝が抜けて支える力強い腕に体を預けてしまう

我に返った時には、一人、惚けたように教室の床に座り込んでいた


(先に、ルール違反を犯したのは おまえだ)
(バイトを引き摺って大学にまで持ち込んだのは、おまえの方だろう?)

いつ聞いたのか、耳に残っていたローの言葉は"先に境界を越えたのはおまえだ"と告げていた

「だからって――、言うだけ言って放り出すのは、ずるい」
耳に残る声にぼそりと反論した言葉は拗ねているみたいで自分でも説得力がないと思った。 その上、

――ずるい奴も 嫌いじゃねぇだろ

という、ローの声が聞こえたような気がして、同時に、にやりと笑う先輩の顔まで目に浮かんでしまった"キャスケット" は
誰も居ない教室で 熱を持った顔を隠すように俯いて 小さく、溜息を零した










「逃げずに来たな」
迎えに出たローの笑顔にどくんと心臓が跳ねる
やっぱり、バンの退院はまだ先らしい。 
それはそうだ。 入院したと聞いたのが先週の事だから いくらなんでもたったそれだけで退院してこいってのは無茶だと
分かっているのだけど、無茶を承知でバンの復帰を期待していた
(身バレの危険があるから詳しい状況は聞けなかったんだけど――)
本当は、大学で聞けばいい。そこまではカメラの目はないんだから。
キャスケットがローとの接触を避けていたせいで話す機会が無かったのだ
(だって!構内であんなこと、するから・・・っ)
余計に、それまで以上に顔を合わせづらくなってしまうじゃないか。
そう思っていたキャスケットだが、不思議とその後は避けるまでもなくローと会うような機会がなかった
だから。
今日は、あのプライベートでのキス以来 久しぶりに先輩の顔を見た事になる
「顔、上げられないか?」
言われて 弾かれたように顔を上げる
見れば、ローは楽しそうに笑って自分を見下ろしていて、不意に上がった彼の腕に びくりと体が強張った

「顔赤い。」
"先輩"の手は、そのままキャスケットの頬をつついて離れていく
くすくすという声さえ聞こえてきそうなほど楽しげな様子のローが 意地悪そうに弧を描いた唇を開く
「久しぶりの方が意識するだろ」
「?!」
くい、と顎で入れと指示を飛ばして先輩が背を向ける
「わざと!?」
その背に向かって叫んだ疑問に ちらりと視線だけ寄越してローは、にやにやと口元に笑みを貼り付けたまま
声を潜めて指摘する
(おまえが避けたがってたから協力してやっただけじゃねぇか)
絶対、わざとじゃないか!
潜められた事で、私事は隠さなければという現実を突き付けられたキャスケットは、表立って文句を言う事もできやしない
ぱくぱくと開くだけの唇を、つぅ・・・っと指でなぞられて 思わず後ずさって扉に張り付いた
ははは、と響く先輩の声はやたらと楽しげで癪に障る
「意識しすぎだ、ばぁか。早く上がれよ。飯、作るんだろう?」
とんとん、と自分の頬を差すローは、キャスケットの真っ赤になってしまった顔をからかっている
笑うだけ笑ってすぐに背を向けてくれた事に安堵の息を吐きながら、たったこれだけの接触でばくばくと騒ぐ心臓に
先が思いやられてキャスケットは頭を抱えたい思いで 口元を覆う
(だめだ、俺――、先輩のこと意識しすぎ。)
こんなんで、ベッドに誘われたらどうなってしまうんだろう
このバイトに来だしてからずっと、ここで起こる事に対して受け身のスタンスを取っていた自分にはローのペースを崩して
自分の都合で事を運ぶなんて出来ない気がする

今夜、どうするかも・・・・先輩次第―――

自分を落ち着ける事だけで精一杯のキャスケットは、常に意識してきたカメラの存在さえも忘れてしまうほど、
ローの強烈な存在と彼の行動で頭がいっぱいだと、気付いていなかった






 見世物は自分

切り売りされているのは自分の感情になりつつあると 彼が気付くのは何時?









客の反応によっては先輩がキャスケットを落としていく過程を見せる事になるのかも。もともとの覗きの目的とは違って
くるけど 通っているうちにキャスケットの表情を視姦るのが目当てになってくる者も増えてきてたり・・・するかなぁ?



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あきゅろす。
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